A.C.T

Today's Report

明るい曲調と畳み掛けるような展開・・そして独特のポップセンスがきもちいい！

　メロディック・ハードのレーベルであるMTMからデビューしたスウェーデン出身の新人。
　新世代プログレ・ハードとも言うべき内容。音の端々にはDREAM THEATERの影響が感じられますが、メロディは時折QUEENを連想させるものも。時にコマーシャルにすら感じられるメロディラインなんだけど、それと反するように曲展開はいたって複雑。ヘヴィなようでカラッと乾いた音像も特徴のひとつ。歌部分の比重は高い。
　ポップで明るめの曲調と、DREAM THEATERのように畳み掛けるような複雑な変拍子展開とのギャップが快感だなあ。特に１曲目Abandoned Worldに彼らの魅力すべてが凝縮されています。変拍子、緊張感を煽るＳＥ、猫の目のように変りつづける展開、それでいてポップなメロディライン・・・
　Brian May風の分厚い音色のギターは歌心のあるメロディラインを持ち、重量感を感じさせながらも軽やかに舞うような感じ。一方、キーボードはDREAM THEATER系バンドにいそうなタイプで、変拍子の間をすり抜けるようなスリリングなフレーズを得意とする。
　４曲目Walz With A Mother Nature、８曲目Cat Eyes、９曲目The ChaseはQUEEN のKiller QueenやOld Fashoned Lover Boyを想起させるようなタイプ。一方、他の曲には、複雑に変化しつづける、まさにプログレ・タイプの曲も。実に幅広い音楽性です。DREAM THEATERとQUEENが好きなのがよくわかります。
　ギターを主体にいろんな展開を短い時間に押し込めようとするのが、ひとつのスタンスと言えそう。ありそうで、こういうのなかったな。これって、面白い存在かも。とりわけ、１曲目Abandoned World、２曲目The Wandering、７曲目Welcomeが個人的に気に入っています。
　MTM盤とAVALON盤ではジャケが異なります。

MTM / AVALON MICY-1140 ('00)

Imaginary Friends

クィーン譲りの独特のポップ感覚にさらに磨きがかかった佳作

　これが２枚目。前作に感じられたDREAM THEATERの影響は影をひそめ、かわりに初期のQUEEN系のメロディラインが全面に感じられる。また、１作目よりもコミカルでシニカルになりました。その飄々とした身のこなしのせいで、へヴぃな演奏も重苦しく聞こえないのがいい。

１曲目 Take It Easy
　いい曲ですよ。QUEEN、VALENSIAにちょっとSPOCK'S BEARDを混ぜたようなひねくれポップ。ポップなんだけど、プログレに引っかかったようなヒネたフレーズが心地良い。１曲目から好印象。

２曲目 Hippest Flop
　メロディやコーラスの使い方にはやはりQUEENの影響が強く感じられます。複雑なのに底抜けに明るく聴かせてしまう旋律を聞いていると、彼らの作曲の巧みさに恐れ入る。

３曲目 A Supposed Tour
　シリアス＆スリリングなメタル調で始まるかと思えば、いきなりシンプル且つコミカルなメロディに。プログレ・メタルを下地に、独自のスタイルであるコミカルなポップを飄々とやってのけています。かと思うと、DREAM THEATERをパロディ化するかのようなスリリングな展開を挟み込む。

４曲目 Biggest Mistake
　SAGAにQUEENとSPOCK'S BEARDを足して天真爛漫に仕上げたような音。メンバーの中にはSAGAのファンもいるそうだが、冒頭やインスト部分にはたしかにそれっぽいフレーズが。キーボードはまんまSAGA（笑）。そう言えば、SAGAのオープニング・アクトもやったことがあるらしい。終盤、がらっと曲調が変わり、ストリングスをバックに歌う様はまるでミュージカル仕立て。曲展開やコーラスの手法はSPOCK'S BEARD。

６曲目 She / Male
　こちらもQUEEN風の荘厳ポップ。転がるようなメロディラインはコミカルだけどドラマチック。見事と言うほかないです。

７曲目 Relationships
　SPOCK'S BEARDばりのミュージカルのような組曲構成。ノリの良いメロディに目まぐるしい演奏。あくまでも明るくそしてドラマチックな曲展開。そしてコミカル・・いくつものことを飄々とやってのける姿に唖然とせざるを得ない。とりわけ、そのドラマチックさは時にDREAM THEATER、あるいはYES、またはSPOCK'S BEARDを次々と連想させる。とりわけYES顔負けのドラマチックなSvetlanaや、DREAM THEATERばりのハイテンションなMr.Unfaithfulが素晴らしい。エンディングも凝っていてその出来の良さには感動モノだ。

これは、おもしろい。コミカルなタッチが気に入らない人もいるかもしれないが、QUEENなりの重厚でスリリングな演奏に、Frank Zappaのようなコミカルでポップセンスが満載。しかもSPOCK'S BEARDのような手の込んだ展開。これが面白くないはずが無い。とりわけ組曲のRelationshipsはすべてのプログレファンに聴いていただきたい傑作と言える。DREAM THEATERの近作よりもずっとプログレ寄りだし、SPOCK'S BEARDやTRANSATLANTICの大作よりもずっとスリリングでスピーディ。この曲だけでもこのアルバムを買う価値は十分にあるぞ。
　このアルバムを発表後、ドラムスが脱退し後任にはANDROMEDAのThomas Lejonが加入。

MTM / AVALON MICP-10234 ('01)