ASGARD

Gotterdammerung

ジェネシス系列のモダン・シンフォ　ラストの大作が良い

　イタリアのモダン・シンフォの雄である彼らのデビュー作。今は亡きMUSIC IS INTELLIGENTレーベルのごく初期に出た作品になります。
　キーボードを主体にした７０年代シンフォの懐かしい手触りと、モダン・シンフォらしい曲展開。実際、いいなあと思えるのはキーボードにプログレ的なフレーズを見つけたときですかね。陰りのある旋律も味があります。

　アルバム冒頭１曲目Antiquumは読経とも教会の祈りともとれる宗教的なコーラスで始まる。初期ENIGMAのやっていたあれだ。音の走っている感じが魅力の３曲目Last Flight Of Silver Drakkarはキャッチーなフレーズを多く持つメロディック・シンフォ。シンプルな演奏とわかりやすいメロディはSI風。４曲目Mysterion-Sophiaは静謐な曲に動が挟みこまれたような展開。５曲目Alone,With My Spiritualは憂いを体現したピアノの小品。続いて６曲目Laudはアコースティックギター。幾重にも重ねてできた音像は気品とパッションが封じ込められているようです。この２曲のインストは非常に出来がよいです。
　ラストに収められた９曲目Voicesは１１分に及ぶシンフォ大作。それまでおとなしかったギターが前面で活躍する。Steve Hackett風にやたらとうねる。４人組当時のGENESISに彼ららしい個性がうまく交じり合って水準の高い作品に仕上がっている。難を言うなら演奏全体が地味なことか。

　ラストの組曲は高水準のシンフォニック作品。これがあるかないかでアルバム自体の出来がかなり違った。デビュー作としては上出来かと。
　彼らは最近も優れたシンフォ作品を出しています。バンドを信じて作品を出し続けたMUSIC IS INTELLIGENCEの功績は大きいです。

MUSIC IS INTELLIGENCE WMMS 007 ('91)

Arkana

シアトリカルなヴォーカルを配したシリアス展開と、キーボード中心の珠玉のインストの二面構成

　２枚目です。GENESIS直系の大人しめのメロディックシンフォを中心に、メタル風からニューエイジ風までを守備範囲とする音です。本作ではモダンなシンフォを目指していて古臭さは感じられなくなりました。イタリアの現役シンフォバンドに近いような音かな。
　ヴォーカルはシアトリカルなタイプ。現代風の演奏とあいまって、ヴォーカルが主体の曲はシリアスな作風になっています。おそらくこれはひとつの個性だと思うし、ここが好きな人もいるだろう。４曲目The Mirror Of The Kingは、モダンな要素とヴォーカルが作り上げるカリカリとした緊張感と、牧歌調のアコースティックギターとが絶妙なまでに調和した作品。この曲は素晴らしい。
　だけど、彼らの魅力はこれだけではない。展開に凝ったがためメロディの印象がやや散漫な複雑展開のヴォーカル曲に比べ、インスト中心の曲はなかなかの聴きモノになっています。インストはキーボードが主体で、かなり聴きやすく感じられる。実際、アルバムの中でいいな、と感じられるのはインスト部分と印象的なキーボードが入っているところばかり。キーボードに楽曲を任せると本当にいい展開なのよね。今風のメロディック・シンフォをベースに、耳に優しくもちょっと新鮮なフレーズが次々と繰り出されてくる。ラストのThe Lords Of The Mountainの終盤に配置されたインストなどは秀逸。優美にしてハード。
　それにしても４曲目 The Mirror Of The Kingは名作。モダンなシンフォやGENESIS系が好きな人は必聴でしょう。

MUSIC IS INTELLIGENCE WMMS025 ('9?)

Imago Mundi

４枚目　メタル、ハード寄りの作風に

この変貌具合はなんだ？　今までのどマイナーな因習シンフォ（勝手にネーミ ング）にパワーメタルを足し込んだような音に。ギタリストでも替わったのだろ うか。タテノリ中心の展開になっているのが特徴。かなり雰囲気変わったなあ・・古臭い音ではあるけど。曲によってはまるっきりパワー・メタル。イタリアで盛んだったプログレ・メタルの影響を受けているのかもしれない。
　彼ららしい静謐メロディック・シンフォの５曲目Virteは安心して聴ける。が、後の曲は正直つらい。ウェットな作風はそのままに、そこへメタルを取り入れることで独自の音にはなっているが・・
　後半になるほどどんどんタテノリに変わっていく。曲によってはパンク風。も ともと粘着性のシンフォをやっているバンドだけに、この割り切りの良さが不気 味である。個性的とは思うが・・・ ラストの曲は彼らが今 までやってきたシンフォに、パンクとメタルが合体したような感じ。ヘンテコだけ ど魅力的。フレーズが頭から離れない(笑)
　全１３曲中、プログレ・メタル調の曲が８曲含まれる。シンフォ・メタル なんだけど、イタリアにはシンフォメタルでは人気バンドが既にたくさんあって、 それらと比べるとどうしても貧弱な感じ。従来路線の継承である５曲目あたりが 妙にいい曲に聞こえてしまう。GENESISタイプのギターとキーボードが入ってる んだけど、７０年代風のうらぶれた感じが気持ちイイ。
　まあ、もともとヘンなバンドだけど。たいていの人には支持されそうにない、 このマニアックな体質がMUSIC IS INTELLIGENTらしい音だよなあ。
　中古盤は時々見かけるが、なんせレーベルが倒産。廃盤です。そのうち入手難に。

MUSIC IS INTELLIGENCE WMMS-028('93)