CAIRO

Cairo

イエス　ミーツ　エマーソン！？　ＳＦ風の無機質サウンドには好みが分かれる

　アルバム前半はアメリカらしい陽性のメロを持つプログレ・ハード作品、後半は90125YESにEmerson加入！　みたいな音になってます。それぞれ、前半は楽曲Silent Winterを、後半はラストの大曲を押さえておけばバンドの特性が理解できます。
　Magnacartaのなかでは最もアメリカらしい音なので、軽すぎるきらいもあります。聞き込むとそれなりの構成なので、まずは合格かな。
　１曲は比較的長め。Magnacarta所属の他のバンドにみられるようなトートツな場面転換はありません。なかには冗長にさえ思える部分も。十分に魅力的な方法論であるしメロディも水準以上、ハードプログレ風のボーカルを含めみなテクは達者なのですが、バンドとしてのまとまりに物足りなさを感じます。リリース間隔の長さから考えてもおそらくパーマネントなバンドではなく、プロジェクトとして都度人材を集めるのでしょう。そのためテクは素晴らしいけどふだん行動を共にしてない分、バンドとしてのグルーヴ感（プログレにこの表現はヘンだけど）が感じられないのが露呈してます。本来メンバー間に生まれるマジックみたいなものが働きだしたら、完成度は高まると見ましたが。

MAGNA CARTA/ROADRUNNER/APOLLON APCY-8189 ('94)

Conflicts And Dreams

よりプログレ寄りの作風に　清涼感のある音

　２枚目。前作はプログレ・ハードをよりテクニカルかつドラマチックに突き進めたもの、という印象だったが、ここではその音をより深化させた。Keith Emersonばりのキーボードワークは更に増えているし、ジャズ・ロック的な要素も見られるようになった。そして１曲の演奏時間がさらに増加し、よりプログレ志向が強まったといえる。
　なんと言っても音が走っているのがこのバンドの特徴。前作もそうだけどどの曲でも常に音が走っていて疾走感がある。それと、湿り気を全く感じさせない明るい音。
　一方、メロディはイマイチ。おざなりになっている感が有る。ドラマチックに曲が展開されているものの、抑揚にかけるというか。せっかくの方法論だが、曲そのものがこれではとても時間が持たない気がする。部分部分は時に素晴らしかったりするんだけど、全体としては起伏にかけてつまらないものに聞こえてしまう。また聴きたいと思うかどうかってのは結局メロディで決まるのではないかな？　もっと広く聴いてもらうためにはメロディの改善が必要かと。

１曲目 Angels And Rage
　冒頭はいきなりMAGNA CARTAらしい音で充満している。さあこれから何かが始まるぞという期待が高まる。前半はギターを中心としてプログレ・ハード的な展開。MAGELLANやSHADOW GALLERYに通じる痛快さがあるが、これら２つのバンドがどこか独特のクセを感じざるを得ないのに対し、CAIROは透明感があって洗練されているという印象。後半はキーボードが前に出てきていて、そのプログレファン好みの演奏を追っかけるだけで充分楽しい。
２曲目 Coridorr
　からっとしたメロディにキーボードが絡むあたりは一服の清涼剤の如き快感。
６曲目 Then You Were Gone
　Emersonタイプのkeybプレイに圧倒される、この曲は大変良くできている。

　最大の聴きものはやはりオルガンプレイだろう。Emersonの再来と例えられるようだけどまさにそう。残念なのはメロディ。

MAGNA CARTAR / ROADRUNNER JAPAN RRCY-1041 ('98)

Time Of Legends

相変わらずの音楽性　完成度は高いのだけど・・

　３作目にしてメンバーが３人に減っている。もとよりパーマネントなバンドではなく季節労働者のごとく時期がくればプロジェクトを立ち上げるため、メンバーの増減が音楽性にたいして影響を与えるとは思えないけど。
　マグナカルタ・レーベルでは最古参の彼ら、今聴くと結構無難な音作りが気になった。のんびりとした活動の間にレーベルは次々と優れたバンドを輩出しているのだ。レーベル誕生まもなく発売された１枚目はYESミーツKeith Emerson風だった。マニアが狂喜した音楽性ももはや斬新ではなく、その後の２枚目がどこか無難な音作りに感じられてしょうがない。
　さて本作。完成度は相変わらず高い。ただ、メンバーが減った分、バンドの一体感のようなものは希薄になった。よりキーボードの重要度（依存度？）は増し、結果として過去の作品に比べより多彩なプレイが聴けるようになった。Keith Emerson風のソロに加え、DALLI'S DILEMMAのようなダークなピアノも聴ける。Emerson風って聴いてて楽しいのよね。一方、キーボード以外は、時々ギターががんばってるなあと思うくらいで、どうも平坦になったような気がして仕方が無い。メロディも全曲似た雰囲気で全体が淡々としたイメージに。うーん。
　畳み掛けるようなリズム構成、アメリカンなメロディ、多重録音によるヴォーカル、デジタルでＳＦ風の音像・・・１枚目から通じてのコンセプトは本作も変更無い。新しいバンドが次々とデビューする同レーベルで、ベテランの彼らがこれではちょっとさびしい。３作目ではもうちょっと新機軸になるものが欲しかった。

MAGNA CARTA MA-9044-2('01)