アメリカのプログレ専門レーベルLASER'S EDGEが満を持してリリースしたプログレ･メタルバンド。DREAM THEATER ＋ YESというとんでもない紹介のされ方をされているようだけど、たしかに初期DREAM THEATERに近い音像に、エスニックやジャズの要素が時折顔を出す。多分にMAGNA CARTA系かと思われるような指向性がある。例えて言うなら「大人しいPAIN OF SALVATION」それとも、「より凝った展開のWORLD OF SILENCE」・・・ENCHANT＋DALLI'S DILEMMAあるいはMARILLION＋SHADOW GALLERY・・・ だが、そういったバンドより曲がどんどん変化していくのが特徴。一聴したところ、やや湿っぽい雰囲気や地中海趣味がイタリア系の音と共通するけど、アメリカらしいテクニカルさとポップセンスも持ち合わせている。くるくると楽曲が変る、猫目サウンドが特徴。
バンド中心的存在のギターは、ハード・ロック調でウネリのある展開を得意とする。アコースティックに持ち替えフラメンコ的なプレイもあったりして芸風は広そうだ。そして、バンド名のとおり正確無比なテクニックで変拍子を次々と繰り出すリズム隊も印象的。
１曲目 Seacrets Of Centuries
ENCHANTのA Blue Print Of The Worldを思い起こさせるやや悲しげな曲想にうねるギターと変拍子がかみ合う。
２曲目 One Wing
畳み掛けるような変拍子をバックに、猫目的に音がくるくると変りながら緩急を自在に使い分けながら曲が展開する。WORLD OF SILENCEを連想させる。
３曲目 East Of Knowing
アラビア音階？ フラメンコ？ どちらともつかぬ地中海っぽいエスニックの要素が強いインスト。華麗なギタープレイに多彩なリズムが絡み合う。これはおもしろい。アメリカのバンドでは珍しい音楽性だと思う。
４曲目 In These Walls Coulds Talk
DALLI'S DILEMMAとENCHANTの中間的な曲に、エスニックをぶち込んだような感じ。ポリリズムや変拍子の連打といった複雑なリズムに、アラビア風の要素が混じっていたりしてこういうのは有りそうでなかった。
５曲目 The Gurdin' Of Eden
これはおもしろい。DALLI'S DILEMMA ＋ BEN FOLDS FIVEみたいな感じ。なんじゃそら。新鮮な曲展開とねじれたポップセンスが良い。ハードな展開から一転、生ピアノに変るあたりなんかまさにBEN FOLDS FIVEね。
６曲目 The Convolution Box
冒頭、SHADOW GALLERYやDALLI'S DILEMMAのような畳み掛けるような重厚インスト。ヘヴィ＆多重ギターは、時にQUEEN、またある時はTrevor Rabin在籍時のYESのよう。
７曲目 Smile Under Sad Eyes
ENCHANTやTHE QUESTのように、メロディアスで開放的な音色と変拍子展開を両立させた作品。
８曲目 Design Of Enlightment
前半、キーボードとドラムが作り上げたハイテックな音世界に、フュージョン的奏法でギターが漂うあたりが最高。曲はどんどん変化していき、次々と違う世界に突入していくような感じ。ちょっと性急すぎるかも。
プログレ・メタルとしては先行しているバンドと似通って聞こえてしまって、ちょっと地味かなというキライはあるけど、エスニックやねじれ気味のポップセンスなど面白い隠し味があって、こういう面を生かしてもっと面白いバンドになってくれるといいな。演奏は上手くて曲展開も文句無いけど、何でもできる分、やや散漫でメリハリに欠けてしまっている。そのため、せっかくの盛りだくさんのアイデアが未消化みたいな気がしてしまう。ともあれ、プログレ･メタルとしての水準は軽ぅく越えているので、安心して聴ける。DALLI'S DILEMMAやSHADOW GALLARYのファンにはオススメできる内容かと思います。