DEPARTURE

Departure

８０年代の懐かしさと９０年代のかっこよさ　ジャーニーやTOTOのファンは必聴

　８０年代メロディック・ハードのキャッチーな旋律に、９０年代のかちっとした音造り。その音楽性はJOURNEYやTOTO、TORILLION、STYXなど、メジャーマイナーを問わず懐かしい雰囲気を喚起させるもの。

　３、４分程度の今時珍しいくらい短い曲をずらっと並べて、これでもかと攻めてくる。そこにハード、バラード、アコースティックなど異なるタイプの曲をぎゅっと圧縮して詰め込んでいる。ハイトーンのボーカルを中心に、ハードだけど弾き過ぎないギター、煌くようなシンセが活躍。コーラスなんかもろ８０年代で思わず苦笑。
　２曲目Searchin'のサビの部分は一度聴いたら忘れられない。３曲目The Way You Show Your LoveはJOURNEYやSTYX系の美しいバラード。４曲目Tonight's The TonightはBOSTON似の曲構成とギター、そしてコーラス。６曲目AnymoreはFirgie Frederiksen在籍時のTOTO風で、アルバム中もっとも凝った展開。それと１１曲目What Goes Aroundはニュー・ジャージィあたりを意識したか、BON JOVIを思わせるルーズでウェット。１２曲目Can't Hurt Me Nowも聴けば一度で覚えてしまうようなメロディ。メロディック・ハードのバンドがいかにもやりそうなバラード。印象的なギターが絡み美しい盛り上がり。１３曲目A Prayer For Me・・これもいいなあ。典型的なアメリカンバンドの、キャッチーなメロディック･ハード･ナンバーという感じ。かつてのBON JOVIを思わせる。
　煌びやかなキーボード、懐かしい音像構成の隙間から垣間見える今風のセンス、そして卓越したヴォーカルのおかげで古臭さなんて微塵も感じさせない完成度の高い作品。洗練されてます。意外性は少ないけど買って損なし。

AVALON / MICY-1060

Open Your Mind

厚く、広がり感のある演奏に珠玉のメロディ

　親しみやすい、入りやすいメロディというのは、逆に言えばありがちな、飽きやすいものだったりする。しかし、このアルバムには親しみやすいのに飽きがこない・・・そんな曲がいくつか収められている。

　演奏は重厚だが控えめ。派手なギター・ソロはない。あくまで歌が中心。ボーカルが変わったようだが、前任者同様高く張りのある歌声は変わらない。コーラスも美しい。
　１曲目はスピーディな演奏に、屈託が無いくらいに明るい歌声が・・これぞ、メロディック・ロックと声を大にして言いたい。この爽快感がたまらん。ポジティブな旋律で聴き手に高揚感を与える・・清涼剤のような曲だ。
　続く２曲目も底抜けに明るく聴けば元気になりそうな痛快な曲。サビにひねりがあって、そこでさらに押し上げられるような感じ。一瞬だけど他の曲にはない「高み」のようなものを垣間見た気がした。好きだなこの曲。
　４曲目はプログレ・ハード風。憂いを感じさせるフレーズ、スケール感のある音像、そしてこのギターはまるでASIA。なんかリズムのとりかたもそれっぽい(笑)
　８曲目は絵に描いたような美しいバラード。もう「バラード作りました、感動してください」って感じの作り。あまりにストレートな作りに思わず「そのままやん」って苦笑してしまう。でも、いいメロディなのだ。やっぱり感動してしまうのだ。そして一緒に歌ってしまうのだ。ノセ方がうまいのねぇ。この曲、個人的に名曲としている人も多いのではないだろうか。

　サビのメロディがいい。歌詞を覚えて一緒に歌いたくなる。明るくポジティブな雰囲気も嬉しい。爽快そして痛快。いいなあ、これ。４０才近くにもなって、どきどきしながらメロディック・ロックを聴くなんてなあ・・
　国内盤が出ていたので、新品中古ともに入手は容易です。

ESCAPE MUSIC / AVALON MICY-1143 ('99)

Corporate Wheel

ジャーニーに近づいた３枚目　爽快さが後退して大人しくなったか？

　三度ボーカルが代わった３枚目。バンド名からしてJOURNEYのフォロワーまるわかりではあるが、今度の人はSteve Perryにチョイ似。
　１枚目、２枚目と比べて音楽性に大きな変化はないけど、ちょっとフツーっぽくなってしまったかな。STYX、TOTOといったプログレ・ハードな部分は後退。哀愁メロディもちょっと大人しくなったか？　JOURNEYを手本とする水準をちょっと上回るハードＡＯＲってとこかな。明るいメロディラインと爽快な演奏は変わりません。

　１曲目Listen to What I Sayは、同じくJOURNEYフォロワー（Steve Perryフォロワー？）のKevin Chalfantタイプ。なんか彼のバンドV.U.かTHE STORMに収められてそうな感じだな。

　３曲目SacrificeはもろJOURNEY。Perry在籍時の未発表トラック、と言えばきっとだませる(笑)　琴線メロディとインスト部分のドラマチックな構成がいいな。
　４曲目TimeもJOURNEYのやりそうなバラード。情感豊かで高揚感もあるいい曲ですね。
　５曲目Down on My Kneesは、ハードなキーボードで幕を開けるプログレ・ハード。ノリノリですな。
　１０曲目Hallowed Groundのキビキビした動きは、SURVIVORやSTARSHIPといった、かつての全米メロディック・ハードの流れを汲むもの。聴いてて嬉しくなった。

　・・んまあ、「飽きる」だの「水準よりちょっと上」だの言いながら、結局は楽しんでしまうんですが(笑／反省)。８０年代ＡＯＲハードの「正統派」的なポジションですね。８０年代に全米ヒットチャート番組ともに青春を過ごした者にとっては清涼剤のような存在だなあ。
　メロディの良さと明るさが取り柄のいいバンドと思う。が、悪く言えば優等生的。大きく変わって欲しくはないが、そろそろ変化が欲しい気も。
　それにしてもメリハリに欠ける録音には閉口です。せっかくの楽曲がのっぺりしてまっていますね。レコード会社には再考を望みます。

ESCAPE / AVALON MICP-10341 ('02)