地味! だけど聴き込めば味の出る渋いメロディック・シンフォ
アコースティックと「泣き」のプレイが得意のギター、そして欧州風の哀愁を漂わせたキーボードが織り成すメロディック・シンフォ。この作品、今は亡きSI MUSICレーベルからリリースされてたんだけど、まあ、たしかにこのレーベル典型の音ですね。軽めのメロディック・シンフォです。録音は82年らしい。玉石混合のネオ・プログレ興隆の時代よりもちょっと前の作品に当たる。
例えて言えばCAMEL、YES、GENESISといったシンフォニック・ロックを、ソフト&スローに展開したような感じ。朴訥なヴォーカルと大人しい演奏のため、派手さには欠けるがじっくり聴くとこれがなかなかいい。70年代のCAMELの影響下にあるメロディラインとギター、ANYONE'S DAUGHTERばりの「ポップだけどウェット」な音像、技巧的には平凡だが懐かしい音色が郷愁をそそるキーボード。印象に残るフレーズもあって、聴き込めばこれがなかなかいいのですよ。
どの曲もそこそこいい感じ。郷愁、安穏・・という言葉がぴったりかな。なかでもタイトル曲であるVoyageは、郷愁と哀愁をいっぱい盛り込んでいてYES系シンフォをゆったりと展開したような作品です。1曲目に収められたHelix Hamonyは、懐かしい音色のキーボードと哀愁ギターが印象的なフレーズを連発していてモロCAMEL風。17分に及ぶ大作Melodyは、曲調が流転していく面白い構成で、前半がGENESISに似ている。
なかなかいい雰囲気。くどくなく、これ見よがしでもないところがいい。良心的な作品だなという印象ですね。心の落ち着く郷愁シンフォ。
溢れる透明感・・耳に優しいジェネシス系ソフト・ロック
SI MUSICからリリースされたシンセ主体のモダン・シンフォ。メロディック・シンフォというよりメロディックなソフト・ロックと言ったほうがいいかもしれない。80年代以降のポップな作風のCAMELをゆったりと展開したような感じ。透明感と優しさに満ちた音色と旋律は、時にニューエイジ的です。
ハードな部分は皆無に近く、バラード調の曲がゆったりと変化していく。そのため、一聴すると緩慢なシンフォに思えます。でも、メロディラインの美しさを徹底的に推し進めたような展開が個性的。シンセを多用し、クリアーで厚みのある音つくり。そこにアコースティックやロングトーンでギターが入る。メロディは3人編成になった頃のGENESISのシンフォ・バラードやあるいはPeter Geeあたりに近いように思うのだけど。またインスト部分は、やはりGENESISのアルバムではたいてい収録されているTony Banks主体のインスト曲に近いです。
個人的に好きなのは4曲目The Long Sideかな。透き通った音が幾重にも重なり、穏やかだけど動的に変貌して行く様が実にドラマチック。次々と表情を変えていく絶景をただただ眺めているかのような気持ち。また11曲目A Different Dayは15分に及ぶ大曲で、唯一スピード感を感じさせる構成になっています。
ただ、それ以外の曲はちょっと刺激には欠けるかなあ。美しいメロディは琴線に触れるものというよりは、無機的な透明感。透明な音が集まってシンフォニーを奏でているよう。