ENIGMA

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classification : electric, house, ethnic
area : Germany
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ENIGMA2 The Cross Of Changes

ワールド・フュージョンに移行した2作目

 1作目MCMXCa.D.を大ヒットさせたMichael Cretuによる待望の2作目。1作目はグレゴリオ聖歌とデジタル・ビートを合体させたもので、宗教的なものをモチーフにするという衝撃的なものでした。個人的にはドイツというと10年くらい前にAngel 07という曲をヒットさせたHUBERT CARというエレ・ポップを思い出すんですが、なんとこのMichael Cretuがプロデュースしていたらしいですね。本国ではかなりの実績のある人のようです。
 この2作目は、その音楽性を<エスニック+ハウス>にシフトさせています。フランスの人気プロジェクトDEEP FORESTがやはりエスニックを題材としながらも、デビュー以来アフリカからそのテーマを東ヨーロッパへ移行させたように、ENIGMAも前作の印象をひっくり返すような新鮮な世界を見せてくれました。
 とは言え、ハウスビートが作り出す強烈なトリップ感や重厚な音世界は変らず、1枚目を好んで聴いてくれた英米のマーケットを十分に意識した音作りになっています。何よりもベースはあくまでヨーロッパ的なものであり、その上に題材として多くのエスニックを取り込んでいるという印象。
 アルバム全体を通して感じられるのは、前作と比べよりより広大な世界観を得ていること。目を閉じて教会で行われるミサを延々と聴いているといった趣きの前作は、内向的な志向を持ちなにか密室で作り上げたような世界でした。本作はそんな狭い部屋から外に出て、いや、出るなんてものではなくて遥かアフリカやアジアにまで飛んでいってます。エスニックの歌い手による伸びやかな声、煌びやかなシンセの海、永遠に続くかのようなビートが「宇宙」や「悠久」といったものをイメージさせるなー。映画音楽を盛んにやっていた頃のVANGELISを彷彿とさせます。

1曲目 Second Chapter
 オープニングの短い曲。ブラス系の音はもろVANGELIS。

2曲目 The Eyes Of Truth
 大ヒットした3曲目ももちろん素晴らしいが、DEEP FORESTCREARAといった同系列プロジェクトの作品を凌駕するような名曲。朗々と歌う女性ヴォーカルに豊穣なシンセの音は、まるで<DEEP FOREST + VANGELIS>。

3曲目 Return To Innocence
 ENIGMAの名前は知らなくてもこの曲を聴いたこと無い人なんていないんじゃないかな。「内なるものへの回帰」「無垢への回帰」を唱える歌詞、大地に染み渡るように優美なメロディは感動的。多くの人の心を捉え、世界的な大ヒットとなった。この曲に「癒し」を求める人もいると思う。

6曲目 The Dream Of The Dolphin
 VANGELISが好んでやるような曲。シンセで構築しゆっくりと変化していく世界のを、深いエコーの掛かったピアノが響き渡る。短い曲だが印象的。

8曲目 Out From The Deep
 うねりのあるハードなギターをフィーチャーした感動的な歌。短いながらも平和や愛への祈りを織り込んだ歌詞を耳にするたび目頭が熱くなる。そのまま、9曲目The Cross Of Changesへと流れ込み、広がりのあるシンセと優しいピアノに導かれ、聴く者は大地を離れ広大な宇宙を漂い始めます。

 しつこいようですが随所にVANGELISを思わせ、シンセミュージックとしては1枚目よりもプログレ・ファンには向いているんではないかと。

VIRGIN SCHALLPLATTEN / VJCP-25077


The Screen Of The Mirror

前作から延長線上 刺激の少ないおとなしい作品・・

 特に目新しい音の変化はなく、平均的なENIGMA作品というところか。過去の作品で導入された教会のコーラスの大々的なフィーチャリングやワールドミュージックへの傾倒、さらにはラテンの取り込みなど極端なまでにその音楽性を変えながらも、そのベーシックな部分・・・本作はそのベーシックな部分を前面に押し出したような音。すなわち、打ち込みリズムが交錯して作り上げる広がりのある音場・・そこに、宗教的なコーラスや情勢ヴォーカルなどが織り込まれていく。
 ちょうどモロダーのスコアのように、未明に流れてる見知らぬフランス映画を眺めているような雰囲気です。抑揚や場面展開の少ない淡々と進むストーリー・・・
 目新しい要素が無くまた曲毎の変化も少ないため、向かい合って聴くほどではないかな。正直なところやや退屈。雰囲気は悪くないんで、まー BGM向きですかね。ゆっくりと形を変りつづけるミステリアスな空間・・そしてその空間の遠くから届くような「遥かな音」を楽しむ、というような感じかな。CDの帯には「官能」の文字が躍っているが、特にそんな雰囲気は感じられない・・たいしたことないです。はい(笑)

VIRGIN / TOSHIBA EMI VJCP-68166 ('00)