日本人好みのギター・フュージョン 穏やかで心地良い楽曲群
フランスらしい流麗ジャズ・ロック。EDHELSやMINIMUM VITALなどに呼応する流れのひとつ。そのなかでもかなり聴きやすい部類で、日本のフツーのフュージョン・バンドみたいな曲もある。フランスらしくエスニックさも取り入れたミクスカルチャーな要素や、欧州浪漫風の気品のあるメロディもあるが、前出の２バンドと比べると、概ねそういった要素は軽め。品がよくさらっと聞き流せてしまうような曲が多い。
ロングトーンな正統派フュージョン・ギターが中心。ゆっくりと展開されるAllan Holdsworthという雰囲気。正確で堅実な演奏から察するに、恐らくメンバーは皆、技巧的にもそれなりに凄いんだろうけど、それが前面に出て来ることはない。情感豊かなメロディを大切にしていて、ゆったりとした印象の曲が多い。MUSEAから数多くリリースされてきたカリカリのジャズロックタイプの作品と対極の位置にあると言えるタイプ。「フグ」という名前からとは対照的に毒気の少ない演奏かも。
「スローなHoldsworth」と言えばいいのか、ウネリのある演奏とエモーショナルな楽曲がいい感じの２曲目Sinistre、もろ日本のフュージョンバンドのような、ムーディなロングトーン・ギターが美しい３曲目Hommage Au Mage、おいおいこれじゃあクロスオーバーイレブンやんか(笑)の４曲目From Barletta・・哀愁の漂うギターがもろ彼女とのドライヴ向き(笑) 黄昏時にぴったりの実用的な１曲。
７曲目A M'on's Domicileは洗練された都会派メロディだけど、複雑な拍子も交えてリズム隊が奮闘しているスリリングな曲。ギターも白熱した演奏を聞かせてくれる。個人的にはアルバムのベスト。彼らの特定であるムーディな雰囲気を損なわずに、メロディックなテクニカル・フュージョンを展開してくれる。途中に挟まれる華麗なピアノソロもポイント高い。
プログレ色はやや少ないが、写実的かつ都会風のメロディがいいのだ。FINCHを洗練させてPRISMに近づけたような感じ。
それにしても、気持ちいい音。気持ち良すぎて眠ってしまいそう・・