HEARTLAND

classification : melodic hard rock, AOR
area : UK
related bands : DISTANCE
review :

Wide Open

メロディック・ハードの王道サウンド

　２作目。豊かな表現力のボーカル、フックの効いたメロディライン、ダイナミックなアレンジ・・・この２，３年のメロディックロック再評価ブームに乗って、この二人組の作品も静かに注目を浴びている。もっともこの初期の作品では、現在活動中のHEARTLANDとは演奏を担当するメンバーが異なっている。
　何はともあれ、メロディック・ハードの王道的サウンドであるFOREIGNERタイプのサウンド。よりタイトにリズムを強調しているところが特徴。そして、ここぞというところにフックとなるフレーズが出てくる。ほとんどがミディアムなテンポでアメリカンなフィーリングを作り上げながら、ときおりタメを効かせた歌唱を差し挟むワイルドさがJohn Melencamp風とも言える
。　めくるめくようなフレーズが満載の全盛期の作品と比べると、オリジナリティの点では物足りない。突き抜ける直前というか、もうちょっとでかなり良くなるんだけどなにか足りないぞ・・という感じがしてどうにも居心地が悪い・・・とは言うものの、これはこれで水準以上の作品。個人的に気に入ってるのが７曲目A Town Called Pride、１２曲目All Or Nothing。

　この作品の後、メンバーチェンジを迎える。

LONG ISLAND LIR 00022('9?)

III

メンバーチェンジの３枚目　高品位で安定した産業ロック

　ヴォーカリストで主導権を握るChris Ousey。その相方がSteve Morris（ほとんどすべての楽器を担当）に変わった３枚目。今回のアルバムは当初、Chris Ouseyのソロとしてはじめたものであり、そのためか歌唱がほかの作品よりも前に出ていて演奏は控えめ。アコースティック・ギターの多用や打ち込みドラムはこのアルバムの特徴。ちょっと演奏に厚みが足りない感じ。その分、歌は他のアルバムよりもソウルフル。
　産業ロック然としたつくりはそれまでとも、これ以降とも大きく変わらない。ただ、メロディック・ハードと呼ぶには、幾分アダルトな雰囲気かな。落ち着いてウェットな感触の曲が多い。
　冒頭の美しいアコースティック・ギターのフレーズと伸びやかなベースが印象的な３曲目Ready To Receive、哀愁のあるアコースティック・ギターのフレーズが効いてる５曲目Don't Say Goodbye、お洒落なアダルト・コンテンポラリー風に粋なギターソロが素晴らしい１０曲目When Angels Call、コーラスの感触とミディアムテンポが小気味いい１２曲目The Mighty Fallが代表。

　高品位で安定した産業ロック。個人的には１０曲目は名曲入り。

APOLLON APCY8293 ('95)

Bridge Of Fools

フォリナー・タイプの産業ロック

　SURVIVOR／FOREIGNEER型のメロディック・ハード作品。わかりやすいメロディと巧みなフレーズ　産業ロックとしてかなりの水準。

　もともとはギターとボーカルの二人組。本作ではバンド形態となり３人のメンバーを加入させ、バンドとしての一体感やスケールアップを目指した。
　「どっかで聴いたようだけどどこか新鮮で印象に残るメロディライン」というヒジョーに難しいこの手の音の宿命的課題をらくらくと乗り越えている。琴線に触れるようなフレーズをさらっと配置していくギター、そして曲にあわせて的確に歌い上げていくボーカル。彼らはまさにハード・ポップの職人と呼ばれてもいい。かつて冷徹なまでにハードポップを突き詰めたFOREIGNERを、ふくよかで暖かにしたような感じだろうか。それとも、うーん・・ポップ志向と成熟度の妙という意味ではTHE STORMやBON JOVIあたりにも通じるものがある。
　コマーシャルな音が大丈夫な人なら、正直、捨て曲がないくらいメッチャ楽しめるはず。それほど産業ロックとしての水準は高いぞ。そんななかでも、重厚な演奏とポップなメロディラインを兼ね備えた産業ロックのお手本のような２曲目Castle In The Sand、心温まるギターの調べとソウルフルなボーカルが印象的なバラード３曲目Where The Pieces Fall、ポップななかに起伏の多い展開を内包したフックだらけの４曲目I Will Wait For You、スケール感とソリッドな質感が魅力の５曲目Elenaは、数多くあるこの手の作品群のなかでは最高水準と断言できる。

　ハード・ポップ、産業ロックのファンは購入して損なし。彼らはタイトル数も多くない内容的にもそれなりの水準。千円以下で中古盤がけっこう出回っている。

ESCAPE / VICTOR VICP-5856 ('97)

As It Comes

安定した作品　ちょっと煮詰まった感あり

　厚みのある音、陰りを見せるメロディライン。曲作りもプロダクションもさすがと思わせるくらい余裕の出来。

　音には意外性は非常に少ない。ひとつの曲のなかでも、またアルバムのなかでもだいたい曲展開とコンセプトには予想がついてしまう。
　でも、そんななかでも７曲目Watever Gets You Throught The Nightのドラマチックな展開はアタマひとつ飛びぬけている。やわらかに着地するようなゆったりとした展開と、畳み掛けるようなコーラス、そしてギターの哀愁を漂わせた旋律がいい。この曲を境に中盤以降の曲は動きのある曲が多く持ち直す。８曲目One Love、１１曲目You Make Me Smileはメロディが印象的。また１０曲目The Runawayと１２曲目Conquer Allのスピード感もいい。

　円熟の音。ただ、安心して聞ける分、「おおっ？」と身を出せるような新鮮さが欲しい。ちょっと物足りないな。