オーストラリアの３人組。自主制作のようです。メディアはCD-R、ジャケットはカラーコピーです。でも、内容はいいですよ。テクニカル志向で同時にメロディアス。プログレッシブな志向性の強い作風です。ギターはAllan Holdsworthタイプ。もちろん、ベースもドラムもテクニシャン。３人の手数の多さには驚きますが、聴いていくうちにそれらが絶妙なアンサンブルになっているのに気づきます。
フツーはソロパートは順番にめぐりますよね。もちろんそういう場面もあるのですが。すごいなと思うのは、３人が一斉に手数王と化す局面が何度もありまして、その時に演奏がバラバラになるどころかぐぐっと音が広がるんですよ。この瞬間の気持ちよさと言ったら。うまく計算されているなあと。絶妙だなあと。感嘆しました。
曲自体は前衛志向とメロディアス志向の２タイプがありますが、いずれもテクニカル／スリリングにグイグイ押していきます。ちなみに１曲目が前衛志向なので、アルバム冒頭が「？？」な人は２曲目から聴くことを強くオススメします。
２曲目Joie de vieはHoldsworthファンが喜ぶこと必至のスリリングな曲です。流麗でスピーディーなギター、ギターに負けぬ速度でうねりまくるベース、手数は多くしかしタイトにまとめるドラム・・・すばらしい。アルバムのハイライトです。
４曲目I Started Out With Nothing And I Still Have Most Of Itは、ハードロックとフュージョンの中間。Steve Morse Bandのように北米調の明快な主題。それをHoldsworth風にウネるギターがなぞっていきます。ギター以上にベースが派手なチョッパーを聞かせてくれるのが嬉しいです。複雑なドラムソロもあり。
５曲目0.25 Fishは、明快な主題と複雑な演奏が絡まりあう不思議な曲です。３人ともめちゃくちゃ手数が多く、ホントはストレートなハード・ポップなナンバーになりそうなところを、くんずほずれつ複雑怪奇にしてしまう。個人的にはギターの後ろに回るベースがいいプレイしてるなと。 ６曲目I Don't Know What He Sees In Youは哀愁フレーズと輝くような必殺フレーズを織り込み、情感豊か。馥郁とした旋律、メロディアスなベースソロ。至福の時を過ごせます。
７曲目Absolute Mobilityも手数ベースとAllan Holdsworth風ギターが活躍する明るい曲。正確にはHoldsworthとSteve Morseを足したようなプレイです。
８曲目All Rivers Long For The Seaはラストを飾るにふさわしい明るく優しい曲。Eric Johnson風のフレーズが散見されます。お約束のベースソロも。
冒頭に書いたとおり自主制作のようなので、まったくと言っていいほど話題になってません。ですがこれ、美しいメロディと技巧を両立させた佳作です。たとえて言うならば「テクニカル系が好きな人向けのドライブ・ミュージック」って感じ。
テクニカル系やメタル・フュージョンが好きな人、Allan Holdsworthのファンにはオススメです。