新しい名手の登場です。Allan HoldsworthやMike Sternと並び称されそうな技巧とスピード感。<ｑBR>この人、Allan Holdsworthタイプとして紹介されているんですが、たしかに流れるような奏法・・・さらに付け加えるなら、もっとちょこまか動き回るタイプ。フュージョンの軽やかさを失わず、華麗に舞い続ける。しかも演奏全体がいいのですね。ギター一辺倒ではなくアンサンブル重視。グループとしての息が合っているな・・と思いきや、インナーを見るとサックス奏者以外のクレジットがないぞ！？ 驚いたことに、彼はドラムやキーボード、打ち込みもこなすマルチプレイヤー。実際ほとんど彼が演奏（あるいは打ち込み）を行ったというのでした。ひえー それでこれだけの躍動感が出せるなんてすごい。どれだけ凄いかは聞いてもらわないと分かってもらえないのですが。
一言で言えば「緊張感と流麗が同居する」作品ですね。フュージョン、ジャズ・ロック、フリージャズとの中間を行くような作風です。変拍子もバンバン出てくるし、フュージョンの軽やかさも、ジャズロックの緊張感も、フリージャズの泥臭さと前衛さも楽しめます。
曲の構成も面白い。２、３分の曲をずらっと１６曲配するという思い切ったもの。おかげで難解な曲もコンパクトにまとめられていて聴きやすい。それでいて中身が濃いので短いと感じられません。
はっきり言ってどの曲もクオリティは高いです。そんななかでも、耳に残りやすい１曲目Muldar's Searchと４曲目Beast of Burton、気品と緊張感が同居する６曲目Remember、スムーズなギターが複雑な展開で映える７曲目From Nothing、フレーズが印象的な９曲目Think About It、１０曲目Heartlandが個人的に気に入ってます。なかでもベストは４曲目。柔らかな物腰を感じさせながらも、目まぐるしく変化するギター・・まるで手をすり抜けるような音。これって不思議な感覚。華麗なキーボードと高速ギターが絡みあう７曲目もぜひ聴いて欲しいです。
プログレ・フュージョンにニュー・ヒーロー誕生です。次作が楽しみ。