GENESIS亜流・・と言ってしまうと「また、ネオプログレか」と思われるかもしれませんが。このバンドが特徴的なのは、GENESIS風とはいえWatcher Of The Skies（Foxtrot収録）に代表される変拍子展開を好むこと、それとフュージョン要素（特にギター）が強いことです。今までGENESIS風と言えば平易なメロディのシンフォが多いのだけど、このバンドほど変拍子を好むのは意外と少ないのですよ。FISH在籍時のMARILLIONに負けず劣らず変拍子が出てきます。軽やかなピアノで変拍子が展開されるところなんか大変美しいです。
ギターがフュージョン寄りというのも珍しい。だいたい、GENESIS系は揃いも揃ってSteve Hackett風のギターを弾きたがりますんでね・・もちろんHackettが偉大なギタリストであることは異論はありませんが。で、このギターのせいでインスト・パートがフュージョン展開になることもしばしば。この辺が今までなかった感じですね。
ボーカルはPeter Gabrielタイプ。これはありがち(苦笑) メロディラインはあくまでわかりやすく概ね明るい雰囲気です。
１曲目 Fathom
いきなり演奏時間が１１分０２秒と表示されのけぞる(笑)。曲が始まると・・おお、冒頭から５／８拍子。すかさずPetar Gabriel風のボーカルが入る。いいですねえ。掴みはＯＫ。１分過ぎで７拍子に。ここの緊張感がまたいい。ちょっとENCHANT風。その後、牧歌調ボーカル・パート、フュージョン系ギターのソロ、YES風シンフォなどを経て、また５拍子へ戻り、７拍子のインストへ・・とおいしいものが「これでもか」と出されて飽きさせません。
２曲目 Timewise
変拍子インスト。ギターはエフェクトは控えめ。オルガンがバンバン使われていて、例えるなら懐かしいクロスオーバーとハードロックの中間的な音でしょうか。KENSOやPRISMなど日本のフュージョン・バンドの演奏に近いです。
３曲目 A Moment's Peace
アコースティック・ギターによるソロの小品。牧歌調だが、美しい曲。Steve Morseがやりそうなメロディ。うまいな、この人。
４曲目 Trial And Triumph
１０分の大曲です。冒頭にチベットのパーカッションみたいな音が入り、なんだ？と思わせて、７０年代クロスオーバー風ギターがうにょぉぉんと。伸びやかなメロディに、柔らかなボーカルが遊ぶ。牧歌調サウンドがしばらく続きく。４分過ぎから７拍子展開を交えつつ、明るい曲のままじわじわと緊張感を高めていく・・・いいですねえ。SALEM HILLみたい。そして私が好きなのはここからです。まず、６分４７秒からギターソロに入ると同時に曲の表情が、翳り深いものにさっと変化。８分目からは追い立てるようにスピード感が増し、再びボーカルパートへ。さらにハーモニクスを駆使したギターとベースが並走し終了。のんびり始まって、めまぐるしく終わるというのがいいです。
５曲目 Speak Of Me As I Am
またもや１０分の大曲。組曲構成です。冒頭はシンセを積み上げたファンファーレ風。続いて１分４５秒から７拍子のGENESIS風へ。ゆったりした曲調。透明感のあるピアノと深いベースの取り合わせが耳に新鮮。６分前後に速いテンポで激しいパートを挟み、元の展開に戻ります。終盤にまたもや一変、ニューエイジ風に。Steve Hackettがスパニッシュ・ギターを弾いてるみたいな感じ。
６曲目 Wayfarer Dance
アコースティック・ギターの小品。
７曲目 Harvesting Stars
最後は１３分です。古き善きシンフォの気品を感じさせる冒頭。SALEM HILL風。その後が怒涛の変拍子展開に突入。正直、拍子がとれません。数えられません。だけど演奏はまったくブレず。メロディは気品を失わず。すごい。特に４分４０秒からの展開はかなりの難易度。YESもGENTLE GIANTも逃げ出すような白熱したインストです。後半はウェットで情感豊か。Andy Latimerタイプのギターを中心に展開されます。この曲、ライブで見てみたい。
いいですね。自分たちが一番好きなものをのびのびやりましたって感じ。それでいて、ファンの好みをちゃんと押さえてる。
メロディもいい。アメリカのバンドらしく曲が明るい。古き善きシンフォのを理解しつつ今風に仕上げてるとこなんか、好感が持てます。SALEM HILLに近いですね。変拍子やってた頃のMARILLIONや初期ENCHANTが好きな人にもおすすめです。