メタルとフュージョンを融合させようとした先駆的な作品。恐らくこれが２枚目。現在では、ジャズ／フュージョンとメタルは互いに異質なものではなく、テクニカル・ロックのフィールド内では、両者はもはや自由に組み合わせ可能な、等価な存在なのだけれど、それを先取りしようかとする９５年のイタリア作品。
スピードメタルをシンフォニックっぽく長尺に構成し、女性ヴォーカルを載せた作品。時折出てくるギターがかなりフュージョンタイプ。ウェットな曲調と非メロディックな作風のため、時にKING CRIMSONにも通じるような前衛っぽさを感じさせる。とりわけキーボードとヴォーカルが前に出て来る楽曲は、もろアンダーグラウンドなイタリアン・シンフォだ。
メタルの様式美とシンフォのトータルな志向性が重なり合い、重厚で荘厳な印象を与える。そこへ存在感のある女性ヴォーカルが加わり、シンフォ・メタルな空間が出来上がっている。が、メロディにどうも力が無く、何度聴いても強く印象つけられないのも事実。また、大作志向でドラマチックに展開しようとしているものの、結果として重苦しさの一本調子に陥っている。ギタリストもヴォーカリストも、個人としての力量は結構有るように思えるのだが、テクニカルさとメロディ、そして楽曲構成がどうもチグハグなのだ。
テクニカル・フュージョン風の８曲目Key Daysだけは出色の出来。複雑なリズムの上を欧州浪漫タイプのギターが大変心地よくスウィープするインストナンバー。PRISMあたりに共通する正統的なテクニカル＆メロディックな１曲。恐らく、ギタリストのエゴに基づくソロ的な楽曲なのだろうけど、メタルとの融合を図った本編よりもずっと好き。ベースも素晴らしい演奏を聴かせてくれる。個人的には、全曲こういうのでやってもらいたいけど。