プログレ・メタルが充実期を迎えつつあるブラジル。９７年というシーンの黎明期の頃にぱっと現れ消えてしまったバンド。劇的な展開、畳み掛けるような展開、そしてメロディアスな曲調。南米で人気のあったSAGAのようなスリリングさを追求して、重厚さを加味したら結果としてプログレ・メタルに至った・・ような感じ。重厚ですが、耳が慣れるとさほどメタルしてないことに気付きます。
録音が弱いですが、各人の演奏力はしっかりしています。とりわけドラムはNiel Peartの影響を感じさせます。英語で歌われるボーカルも歌唱、発音ともに上手です。
面白いのはインスト・パートの充実ぶり。ハード／メタルよりも、明らかにジャズロックやフュージョンの影響を強く受けています。そのまま続いてたらメタル・フュージョンへ行ってたかもしれませんね。
１曲目In Desires' Handsは、音色こそチープだけど、畳み掛けるような展開が次々と続きなかなかの聴き応え。SAGAゆずりのスピード感、後期UKのようなドラマチックとメロディアスのバランスの良さ。アルバムのなかでこの曲が突出して出来がいいです。これだけいいと、プロデュースの貧弱さが微笑ましく感じられます。
２曲目Fictionsはスケール感のある演奏。中間部のインストはメタルというよりも、むしろジャズロックに近い。端々にRUSH的な手癖を感じさせます。
４曲目Truth In Liesは１曲目同様、カリカリの緊張感とスリリングさがたまらない。目の回るような演奏・・インスト・パートは超絶技巧派フュージョンです。キーボードとリズム隊が白熱した演奏を聴かせてくれます。
７曲目Hammerは、前半の歌パートは特にどうと言うこともないんですが、中間からのインストあたりからの超絶高速演奏には参りました。目が回るぅ〜 これほんとに演奏してるんですかっ よくぞここまで・・・やはり、ジャズロックですね、これ。
プログレメタルへの情熱を感じさせます。洗練されてない音ですが、このまま続いていればブラジルのSAGAになれたかも。どの曲もインスト・パートが充実しています。
それにしても、やたらとスリリングな演奏と、録音の悪さにはかなりのギャップが感じられます。・・そう言えば似てるバンドがありました。スリリングだけど音がチープ・・やはり１枚で消えた、アメリカのEQUINOXによく似ています。国内でも発売されていたので知っている人は多いでしょうね。本作は、あのEQUINOXにジャズを加えたような感じです。