PROPHET

Prophet

ＡＯＲハード風のメロディ、プログレ・ハードなインストパート

　ウネリのあるメロディ・ラインとプログレ志向のキーボードを擁する、メロディック〜プログレ・ハードなバンド。８０年代半ばに活動していました。一旦ＣＤで再発されたものの、長い間品切れ状態だったのですが１０年後に復刻となりました。

　彼らの活動していた頃はかつてのプログレ・ハードが産業ロック化された後、メインストリームから外れかかっていた頃。しかし、彼らは自らの音楽性にこだわり、むしろ７０年代末から８０年代初頭あたりのアメリカン・メロディック・ハードな音を志向していたようです。ちょうどSPYSやASIAにも近く、そういったバンドにハードなギタリストを入れて複雑な演奏をやらせたような感じでしょうか。
　メロディは分かり易く、曲展開はドラマチック・・・メロディは往年のアメリカン・バンドらしさを感じさせるもの。下手するとＢ級的な下世話さも感じられるんだけど、演奏そのものは凝っています。特に「よくある産業系メロディック・ハード」として片付けられてしまいそうな音楽性に、プログレ志向のキーボードがヒネリを与えていて、その結果これがいいバランスに仕上がっているのです。もちろん、ハードなギター、ヴォーカル・・・そして曲にうまい変化を与えているコーラス・ワーク、非凡なベースと、聴きどころはたくさんあります。

　聴きモノはSPYSやROMANTICSを髣髴とさせるメインストリームなメロディラインと、これぞプログレ・ハードと賞賛されるべきインストパート・・・その両者の対比が見事に現れている３曲目Away From You。また、５曲目Power Playの派手なキーボードワーク、ASIAのそっくりの重厚ポップの６曲目Evening You Are（ほんとに似ているのだ！）、スリリングな曲調とキーボードソロがカッコいい８曲目Sail Away・・・こんなところかな。

　ハードなギターもなかなかのもの。しかし、プログレ・ファンとしては、カッコいいキーボード・ワークが出てくるのが嬉しいやんなー。３枚出ているアルバムのなかでは、このアルバムが最もプログレファン向きだと思います。

Z RECORDS ZR1997049 ('8?/'01)

Cycle Of The Moon

ヴォーカルにRussel Arcaraを加え、高性能ハードポップへ転向

　ヴォーカルとドラムスが交代した２枚目。新しいヴォーカリストは後にARCARAを率いるRussel Arcara。前任者も悪くなかったのですが、このRussel Arcaraは声に輝きも張りもあって音域も広い。
　彼を迎えて音のほうもフルモデルチェンジしています。アメリカン・ポップの側面と、ハードな演奏を併せ持つＬＡメタル風に変化。同時にプログレ要素がほとんど消えてしまった・・　とりわけキーボードが後ろに下がってしまいました。明快なメジャー志向への軌道修正がなされています。

　２曲目Cycle Of The MoonはFOREIGNERタイプ。フックになるメロディを乗せたハード・ポップ。最初は印象的だったけど、聴くうちにいかにもありがちなメロディに思えてきた（笑）
　４曲目Some Of A Breaking HeartはSURVIVORやJOURNEYを思わせるハード・ポップのお手本。
　６曲目Tomorrow Never Comes
　一転して哀愁に満ちたバラード。アコースティック・ギターがフィーチャリングされていて、KANSASのDust In The Windのような雰囲気。
　９曲目Hyperspaceは唯一プログレッシヴ志向を残す曲。複雑な拍子を織り交ぜたテンションの高いインストだ。スリリングで目まぐるしく変わる肉体派な展開はまるでDREAM THEATERのよう。これには驚き。

　ハード・ポップとしてはよくできていると思います。演奏もしかっりしているし、メリハリがうまく利いている。一皮剥けたという印象だ。ただし、流れるようなメロディもどうも聴き易すぎてすぐ飽きそうな感じ。プログレ・ハードでなくなってしまった分、聴く方としてもどうも物足りないんだなあ・・前作は垢抜けない部分もあったが、自らが「プログレ・ハードが大好きなんだ〜」という気持ちがこめられていたように思います。
　僕の持っているのは日本盤だけど、０１年に海外で再リリースされています。

MEGAFORCE / H&H / ALFA MUSIC ALCB-3036 ('88/'94)

Recycled

ギター主体でメロディック・ハード路線を強めたラスト

　これが３枚目にして最後のアルバム。プログレ・ハードとしてデビューした彼らでしたが、ここで聴かれるのは典型的８０年代型メロディック・ハード／メタル。メロディは達者でJOURNEYやSTYXに通じるものがあります。歌もテクも申し分無し。二本になった速弾きギターの歯切れの良い音が心地良い。プログレ・ハードに固執せず、ギター主体のメロディック・ハードとして聴く分にはクオリティは高いかと。
　悪く言えばこれといった個性が感じられないところか。時折聞こえるオルガンはなかなかいい雰囲気なんだけど、意図的に音量を下げられているようでこれも残念。ギターが二人もいるせいで切り捨てられたのでしょうね。
　純然たるメロディック・ハード作品。プログレの残像を求める人にはおすすめしませんです。

HALYCON 9-61234-2