進展著しいイタリアから、またもや新星登場といったところでしょうか。重厚な演奏と、個性的な展開を大切にしている。技巧を披瀝するばかりではなさそう。聴きやすい音。アルバム前半はプログレとは無縁の技巧派メタルのようにも聴こえたが、アルバムが進むにつれどんどんプログレッシヴさが増して面白くなっていくのが特徴。
パワフルな演奏と印象的なメロディラインとのバランスがいい。ほぼ全面に渡って活躍しているギターは真性メタルな音だけど、知的なリズム展開を多用するリズム隊とプログレッシヴな奏法を好むキーボードがなかなか頼もしい。歌はすべて英語で歌われていてヴォーカリストの発声が実にしっかりしています。
どの曲も完成度が高いのだけれど、敢えて選ぶなら下記の４曲。
２曲目 The Fall
ざくざくと刻まれるギターの間に配置されたプログレッシヴなキーボード・ソロがかっこいい。
５曲目 Message
メロディラインの巧みさ、パワフルな展開・・・間違いなくアルバムのハイライト。強烈なインパクトを感じる。
６曲目 Godot's Arrival
三曲から構成される力作・・おそらくイタリアメタル史上に残るであろう傑作。キーボードが全面に渡ってフィーチャリングされている。９０年代末ごろのDREAM THEATERのような、知的で重厚な展開。疾走感あふれる後半もいい。
１０曲目 Tin Soldier
重厚で濃密なバラード。物悲しいメロディを奏でるピアノ・・・アルバムのラストを飾るにふさわしい印象的な作品。
アルバム前半は単にへヴぃなフツーのメタルにも聴こえる（もちろんこれだけでも、ちょっと前のイタリア勢の水準を軽ぅ〜く超えているのだが）。プログレッシヴな部分が前面に出てこないためだ。しかし、後半には変拍子やスリリングなキーボードソロなどが時折出てきてプログレ・メタルのファンの聴きどころは少なくない。それでもピンとこなかった人には５曲目から聴くことをお勧めします。それほど後半に行くほど充実していくのだ。
そして、まるでDREAM THEATERの近作のように、テクニック的なものを抑圧しながらも知的な展開と聴きやすさが同居しています。プログレ・レーベルMUSEAからようやく本物のプログレメタルが出現したなあ（当時）。メタルファンもプログレ・メタルのファンも必聴の名作。