オルガン、ピアノなどの要素を入れたミクスチャーなへヴィ・ロックです。轟音ギターと曲全体を覆うダークな雰囲気に押しつぶされそうに思いいましたが、聴き続けるとまったくの杞憂でした。ソリッドでカチッとした音が特徴です。へヴィ・ロックにありがちなだらだらとした印象はありません。
表情豊かなヴォーカル、オルガン、ドラムが複雑に曲を織り上げていきます。そこへアコースティックなピアノやＳＥが入ることで、曲に更なる抑揚が加わります。
その取り合わせもうまい。ブルージィなギター・ソロを弾いた後にスリリングなキーボードソロが出てくるとか、壁のような轟音サウンドにちょっとしたピアノがブリッジに入っていたりと、バランスが感覚が絶妙。ラウドな音は苦手という人にも、この構成は十分にアピールするんではないでしょうか。
面白いのは、大半の曲でインスト部分の途中でがらっと曲の表情が変わる局面があること。さらに、曲の冒頭とエンディングには、シンセやピアノを使って曲の本編とは異なるパートが付加しています。こういった工夫が曲の世界に厚みを与えています。まさにプログレ。
メロディもいいですね。陰りと悲哀を漂わせながら聴き手の心にしみ入るような巧みなフレーズ。
録音や音選びにもこだわりが感じられます。特にキーボードは、オルガンでドライブ感を、ピアノでドラマチックさを、シンセでスペイシィな感覚を醸し出しています。おかげで遠近の感覚をうまく生かした音作りで世界観を広げています。
どの曲もいいんだけど、個人的に気に入っているのは次の３曲かな。
１曲目 Kiss & Kill
３分３０秒あたりで曲の表情が変わるあたりの緊張感とスピーディーさがいい。多弁すぎないメロディ、重厚さと意外性が交錯する展開・・彼らの良さが凝縮した１曲。
５曲目 Bustale
メロディが印象的。ちょっとU2を感じさせる。畳み掛けるようなリズムと表情豊かなヴォーカル。最近のENCHANTにも通じるような雰囲気を感じさせる。続く６曲目New Horizonもいい曲。へヴぃなのに心にしみる。
１０曲目 My Aching Pain
闇夜に溶け込んでいくような展開が新鮮。終盤のピアノ・ソロはPrivate Musicの作品のように、穏やかさとシリアスさを内包した不思議なもの。
陰りのあるメロディとソリッドな音作りは、最近のENCHANTを思い出しました。へヴィに展開したENCHANTという感じ。深夜に聴くのがぴったり。