SOUL CAGES

Soul Cages

ハード・ロック寄りの英国風ポンプ

　プログレ・メタルと聞いて買ってみたら・・ん・・ポンプ？。例えて言えばFATES WARNING＋ポンプか。SHADOWLANDに通じるような内に篭るような物悲しいメロディ、そして伸びやかで哀愁が漂うKarl Groomタイプの表情豊かなギターが特徴。ギターは左右から聞こえることがあり、どうやら専任ギターの他にヴォーカルが兼任で弾いているようだ。
　楽曲は比較的シンプルでゆったりとしている。深い海のような揺らぎに身を任せているようで、これはこれでなかなか心地よい音ではある。しっとりとした音。夜向きのメタルというところかな。アヴァン色は皆無。ジャーマンらしく分かり易いメロディを基本とし、もの悲しい展開にメタリックなリフからJADIS調までをカバーしているギターが楽曲を覆い尽くす。あー　湿っぽい（笑）　地味ながらも丁寧に作られているし、それなりにドラマチックな曲も有る。演奏、プロダクションともに問題なし。曲が皆同じように聞こえてしまうのが欠点か。
　最初は地味な印象だったが、シンフォのようなつもりで聴き込むとなかなかいい感じ。７曲目Soul Cagesがドラマチックでなかなか良かった。他にも、ポンプ調のメロディと秀逸なギターが印象的な１曲目 The Narrow Path Of Truth、FATES WARNINGタイプの３曲目Reflections、まさにモダンシンフォという趣きの４曲目 Mindtripも聴きもの。
　FATES WARNING、SHADOWLAND、YWIS、LIGHTあたりが近い。この手の音が好きな人は結構いると思う。

MASSACRE RECORDS / IRS MASS CD 032 ('94)

Moments

最も地味な作品　テンション・旋律・完成度のいずれも低調

　１作目の延長上にある音。SHADOWLANDや初期THRESHOLDに近い感じ。前作のどうしようもないくらいの湿っぽさは軽減。閉塞感からやや開放感へと向ったかな。
　ギターのフレーズも、ドラム・パターンも悪くない。たしかにプログレ・メタルを感じさせる音ではある。でも、メロディラインに魅力がないのよねえ。それと、起承転結のはっきりしない曲構成はどうにも居心地が悪い。どの曲も同じように聞こえるし。
　過去のバンド。今、購入してまで聴く価値があるか疑問ですな、はっきり言って。まあ、１、３枚目はそこそこ良かったし、希少価値のあるこの２枚目を中古コーナーで見つけたときは嬉しかったけどさぁ・・。プログレ・メタルが進化していく過程で出現した音であって、博物学的な興味を持たない限り、聴けないなあ・・好きな人が居たらごめんね。
　数あるプログレ・メタルのバンド群のなかでは変わったポジションではあると思うけどね。ポンプ系と融合した作風や、湿っぽい手触りの楽曲・・・独特の美意識がアートワークにも見て取れる。だけど、曲の魅力に乏しいのが致命的です。

MASSACRE MASS CD 085('96)

Craft

ポンプとメタルの合体　よりハードでドラマチックに変化

　おそらく３枚目。デビュー当初の湿っぽさは減退し、より変化のあるサウンドへ変貌している。簡単に言えば、ポンプ風サウンドとメタルの合体サウンド。BEHIND THE CURTAINやDILEMMAに近いが、ポンプ系とメタルの合体した系統のなかでは比較的手数が多いほうだろう。ギターのリフやリズム隊はDREAM THEATERやQUEENSRYCHEを踏襲しているが、リードを取るときのギターや歌パート、キーボードはかつてのSI MUSICのようなポンプ系サウンド。
　内向的なメロディが多く哀愁感を漂わせている。また歌パートは独特の高揚感というか説得力みたいなものがある。ヴォーカルはメインの男性に女性がサポートを入れる構成。

　１曲目PressureはSEを多用したドラマチックな構成。QUEENSRYCHEにポンプを足しこんだような感じ。組曲風に繋がっている３曲目から５曲目が最も起伏が感じられて、アルバムのハイライトに相当する部分だろうか。インストパートあり、重厚ギターとピアノの応酬ありと聴き応えのある展開が続く、が、よく聴くとSI MUSIC風の典型的ポンプなメロディに、メタリックなエネルギーを注ぎ込んだ構成であることに気づく。後半はよりメタリックに偏重した曲が増えていて、今後はそっちへ移行していくということなのか。 　SHODOWLANDやTHRESHOLDとも異なる方法論で、メタルとポンプの二面をうまく併せ持った音楽性。かつてのポンプがプログレ・メタルのエネルギーを得ることで、新たな展開を見せてくれたようで興味深い。

MASSACRE MAS CD0213 ('01)