メロディック・パワーを少しプログレ風味に。歌パートはメロディック・パワー、インスト部分はピアノや複雑リズムでドラマチックに。長めのインストパートを配置したり曲調が突如として変わるなど、構成にも工夫が見られます。印象的なフレーズも好印象。ギターはザクザク・メタル風をやったかと思うと、メロディック・シンフォによくある哀愁系も。リズム隊は典型的パワーメタルだけでなく変拍子もカバー。出番は控えめですがピアノもちゃんと出てきます。
ボーカルはメタル風でもハードロック風でもなし。声量もフツー・・ま、この普段着っぽいとこがメタルファンではない僕には馴染みやすいですけど。
例えて言うなら、９０年代半ばのDREAM THEATERをお手本にした作風。個性的なのは、メタル由来の重厚な演奏と、メロディック・シンフォ然とした情感豊かな旋律とがどことなくミスマッチに感じられること。このミスマッチな感じは聴いてもらわないと分からないと思うけど・・似たようなバンドではBEHIND THE CURTAINやSOUL CAGEといった、やはりメタルとメロディック・シンフォが合体したタイプが近いですね。
印象的なフレーズを配した２曲目Newcomerや６曲目Angels、９曲目Between Two Worlds、１０曲目Ramblingがこのバンドの本領発揮に思える。とくにこの９曲目は飛び道具的な仕掛けはないものの、メロディック・シンフォとメタルとの理想的な合体か。ドラマチックなんですよ。厚みのある曲展開が素晴らしい。アルバムでイチバンの出来です。１１曲目のFlyはポンプにメタルが合体したようなドラマチックな作風。これまた素晴らしい作品です。また、地中海風の味付けの７曲目Full Moonやパワーメタルとは無縁な伸びやかなメロディの８曲目Whisperなども個性的。
地味ですがメロディ、構成ともにしっかりした良心的な作品です。とにかく情感に訴える旋律が上手い。最近のメロディック・シンフォに通じる旋律です。東欧のシンフォ作品を研究しているのでしょうか。似ています。