TEA IN THE SAHARA

Behind The Door

スピード感のあるGENESIS風の現代シンフォ

　ドイツのシンフォ・バンド。これが１枚目。シンフォといっても現代風でスピード感のある展開が嬉しい。手垢にまみれた典型シンフォではなく、重量感とスピード感はプログレ・メタルに共通するものがある。変拍子の多用、起伏のある展開、スリリングな構成などプログレ・メタルの方法論をシンフォに生かしたような感じだろうか。
　インスト部分はYESを、歌部分はGENESISを感じさせる。いくつもの印象的なフレーズの組み合わせや、複雑にアレンジされた楽曲を一糸乱れず演奏してみせる統制の良さなどはまさにYES。一方、歌部分の、比較的シンプルでちょっと哀愁を感じさせるメロディ・ラインはGENEISのようだ。
　変拍子を楽々とこなすリズム隊、生ピアノを多用するキーボードが聴きモノかな。メロディはイマイチこなれていないものの、一応メロディアス志向のようだ。ヴォーカルのパートは比較的少ない。歌部分について言えば、インスト部分と比べるとまだまだ改良の余地が有るように思われる。

　組曲形態ばかり入った６曲入り。なかでも、YESのような緊張感溢れるインストと、ピアノのフレーズが印象的な５曲目、ジャズ展開やベースソロを含むGENESIS風の６曲目がいい。

　インスト部分の充実振りが良い。一方、ヴォーカル・パートは単調か。演奏は荒っぽいところはあるがこれはこれで面白い。もうちょっと派手さと良いメロディがあれば人気が出そうな気がするけど・・

WMMS / MUSIC IS INTELLIGENT WMMS057 ('94)

Boomerang

　手数が多いリズム隊を擁する知的でポップなネオ・プログレ。

　キーボードを含む５人組。これが２枚目らしい。現代的でポップなメロディに、シンフォ度はさほど高くないが、明らかに８０年代以降のシンフォを基点としているようだ。MARILLIONに通じるポップ／シンフォ感覚に、ミドルテンポながら凝ったリズムが入っているような感じ。メリハリの効いた演奏で完成度は高い。そして１枚目より世界に幅が出ている。
　ヴォーカルパートの比重は高い。歌は上手い方で割とフツーっぽい声。Steve Hogus同様、プログレ固有の気負いがみれないところに好感が持てる。ドイツのバンドだがすべて流暢な英語で歌われている。
　キーボードは技巧派ではないけど、さりげなくシンフォっぽい雰囲気を作ったり、アンニュイなフレーズを持ち込んだりして曲のレベルアップに貢献している。同じことはギターにも言え、派手では無いがいい演奏をしている。聴かせどころにはピアノが使われていることが多いように思う。
　ベースとドラムは手数が多くなり前作よりもレベルアップしている。このリズム隊じゃなければ行儀が良いだけの地味なポンプ系になってしまっているだろう。
　メロディはわかり易く、情感に訴えかけるような説得力と品の良さを感じさせる。ちょっと哀愁を刺激する旋律。しかもWMMS系には珍しく垢抜けた印象がある。

１曲目 Edging The Tongue
　導入部分のキーボードのフレーズが、いかにもプログレ調といったタッチで緊張感を盛り上げる。これを聴くだけでだけでも期待が膨らむというもの。そして凝ったリズムが入って続いてギターが・・例えはヘンだけどプログレ版POLICEのよう。隙間がある音なんだけど、独特のリズム進行の上をギターとキーボードのフレーズが駆け抜ける感じがたまらない。
２曲目 Vivian
　７拍子を上手く取り入れたミドル・テンポ。複雑なリズムに華麗なピアノ／シンセが絡む中間部のインスト部分が美しい。
４曲目 Seasons
　シンフォニックなキーボードを背景にニューエイジ風ピアノと伸びやかなベースが交錯するインスト小品。つい聴き流してしまいがちだけど、ベースの演奏も素晴らしい。PRIVATE MUSICのような雰囲気がいい。
５曲目 Sometimes In Winter
　アコースティック・ギターとコーラスを主体にした静かな曲。メロディがいい。WITSEND風。
６曲目 Waithing For A Perfect Time
　一転して動的な曲。短いアカペラで、あれ？　っと思わせて、いきなり弾けるように演奏が被さるところが大好き。現代シンフォとハードがくっついたような音像は、最近のMARILLIONやENCHANTに近い。中間以降の凝った演奏がいい。
８曲目 A Lamentation Of A Scapegrace
　１４分を超えるシンフォ大曲。前半は緊張、後半は弛緩・・てな感じか。スリリングな演奏の後に、ちょっと肩の力を抜いたような雰囲気になっているあたりは、９０年代のバンドらしい。構成はしっかりしておりバンドが非常に上手くまとまっている印象を受ける。

　こういうのもプログレ・ハードの一形態かもしれないけど、ギターのヘヴィネスを取り入れた現代風のリフや、ジャズっぽいベース進行など、いろんな要素を持ち込んでいる。でも、詰め込み主義じゃないんだよね。隙間を感じさせるくらい、ライトな雰囲気が残ってる。そしてメロディアス・・MARILLION同様、現代的なセンスと品の良さが伺える旋律。
　派手さはないけど、いいですよ、これ。WITSENDやMARILLIONに近いけど、そこへ現代的なセンスと多彩なリズムを持ち込んでいる。

MUSIC IS INTELLIGENCE WMMS 099 ('96)