Steve Thorne

Emotional Creatures Part One

ウェットで深みのある音が心地よい　ひとりマリリオン？

　JADISのサポートメンバーとしても活動しているSTEVE THORNEのソロ・デビュー作。Nick D'VirgilioとGary Chandlerが参加しています。
　プログレ色は弱いですが、歌とメロディを大切にした厚みのあるブリティッシュ・ロック。ウェットな質感がいい感じ広く深みのある音つくりは「ひとりMARILLION」って感じかな。そういや、同じくMARILLIONのサポートしていたJohn Wesleyに、立場も曲の雰囲気も似てます。

　ギター弾き語りでゆったりとしたフォーク調の２曲目God Bless America、スリリングな曲調の３曲目Well Outta That、D'VirgilioのエモーショナルなドラムとGeoff Downesのキーボード・ソロが秀逸な５曲目Last Lineは、ARENA以降のASIAにも通じるかっこよさ。
　曲が秀逸なのは７曲目Therapy。穏やかでシリアス。耳に残ります。
　PORCUPINE TREEかSYLVANかという音作りの８曲目Every Second Counts、再びフォーク調の９曲目Tumbleweeds、１１曲目Goodbye・・

　次作も用意しているらしい。楽しみ。

Giant Electric Pea / GEPCD1035 ('05)

Part Two Emotional Creatures

秀逸な旋律と真摯な歌　そしてシンフォニック　豪華なゲスト

　早くも２作目です。これが前作よりもモダンな音になりました。プログレ度も増しているのですが、それ以上にポスト・ロック化が見受けられます。またオルタナ要素も入りました。おかげで、音の広がり感も、ドラマチックな構成も増えました。前作では、メロディック・シンフォからシンフォ抜いたような感じ・・と身もふたも無い印象を持ってましたが、こちらはいいですね！
　メンバーも強力です。ドラムはNick D'Virgilio(SPOCK'S BEARD)とGavin Harrison (PORCUPINE TREE)、ベースには御大Tony Levin (KING CRIMSON, Peter Gabriel)とDave Meros (SPOCK'S BEARD)とPete Trewavas (MARILLION, KINO)、ギターは泣く子も黙るGary Chandler (JADIS)と John Mitchell (ARENA, KINO, FROST)、キーボードにはなんとGeoff Downes (ASIA, YES)とMartin Orford (IQ)という、怖いくらい豪華な布陣です。

　冒頭の１曲目Toxicana ApocalypsoからMARILLIONとJADISが合体したようなドラマチックな楽曲で幕を開けます。
　３曲目Crossfireはアコースティック・ギターとピアノをフィーチャリング。へ？　アコースティックな極ではありませんよ。これが緊張感バリバリに仕上がっているのです。この劇的な展開はMARILLIONタイプですね。
　４曲目Roundaboutはエレクトロとメロディック・シンフォが融合した面白い曲です。うにゅ〜んとしたシンセの音、ポスト・ロック風にイコライジングされたボーカル。不思議な曲調です。
　５曲目Houndedはメロディがいいですね。この人、ソングライティングが上手いです。やるせない曲想はMARILLIONあるいはJohn Wesleyに似ています。終盤に演奏が白熱化。YESやIQの白熱インストを思わせます。熱いな。
　６曲目All The WisemenはJohn Wesleyがやりそうな曲。哀愁の旋律、どこか殺伐とした雰囲気。渋いなあ。さりげなくポスト・ロック風に処理されているのもいいです（ボーカルのイコライジング、ＳＥ的に使われるサンプリング音など）。泣きのギターがいいっ（涙）
　その後の曲も粒揃いです。スケール感のある弾き語りだったり、ひとりMARILLIONだったりするわけですが。

　音はイコライジングされてはいますが、聴き終えたときの印象としては「旋律がいいなあ」というのが残るわけです。秀逸な旋律と切々と歌い上げる姿を通して、歌を大切にするミュージシャンという姿勢が見えてくるんですよね。うーん、堪能しました。いいアルバムです。

GEP GEPCD1036 ('07)