ASIAやJOURNEYといった８０年代の産業ロック。ロック自体がマイナーな存在になってしまった現在、メインストリームから外れてＡＯＲやプログレといった他のジャンル同様アンダーグラウンドなシーンに落ち着いています。そこには、今でも純粋に「産業ロック」系の音を目指すバンド群がひしめいているのでした。そんな産業ロック系のバンドが多数在籍しているレーベルFRONTIERS RECORDSから０２年にデビューしたのが彼らUNDER SUSPICION。３人組である彼らは互いに国籍の異なるスタジオミュージシャンで、SURVIVORやTOTO周辺人脈でレコーディングに参加したり、映画、テレビのサントラなど、まさに音楽産業に長らく身をおく人物。なるほど、手馴れた演奏と音つくりは新人の比ではないと感じました。
メロディは明らかに産業ロック志向。８０年代後半の洋楽チャートで聴いたような音ですね。よくある「どこかで聴いたような」フレーズが多いです。口当たりの良いメロディラインはすぐに覚えてもらえそう。
演奏はミディアム・テンポが半分くらい。スピード感のある曲ではSURVIVORやNIGHT RANGERをマイルドにした感じ。一方、バラードは初期BON JOVIに通じるものが。まさに８０年代後半の産業ロック系ですね。ただ、当時と違うのは分厚いシンセがないこと。今聞くと感じますよね、シンセが過剰にかかってるなあと。そこら辺は今風ってことで。シンセの代わりに、コーラスやパワフルなドラムが演奏に骨太な印象を与えています。歌唱力も申し分ありません。
産業ロック／メロディック・ロックのお手本のような１曲目Welcome To My Lifeは、一度聴いたら忘れないくらい印象的。ウェット＆エモーショナルなバラード５曲目Hold On、どんどんドラマチックに盛り上がり最後はシンフォニックにまで至る９曲目Traveller Of Time・・・
聴き終えて感じたのは、アルバム全曲が粒揃いなこと。そしてメロディック・ハードとソフト・ロックを足したような感じ。メロディの良さを前面に押し出しつつエモーショナルに迫る、といったところかな。メロディック・ロックのファンには間違いなく一押し。ただ、定石を踏襲した丁寧な演奏は、逆に言えば意外性はゼロ。粒がそろいすぎているのもプログレ・ハード系を好む人には物足りないかな。完成度は高いので、あとは好みの問題です。