まだまだいろんなバンドが出てきそうなイタリアのプログレ・メタル・シーン・・・このABSTRACTAはそのイタリアからの新しいタイプのバンド。イタリアからは毎月のようにプログレ・メタルの新人が登場していますが、この手の中ではかなりプログレ寄りの作品になってます。言い換えれば、メタルなギターが参加したアヴァン＋シンフォ系のバンド、と言えるかも知れません。まず、リズムが複雑。細かな場面転換は多いです。もともと持っている要素がたくさんありそう。TIME MACHINEのようにクラシカルとドラマチックを追求するシンフォ・メタルとは異なり、KING CRIMSON的なテクニカルなアヴァン色に傾倒しているように思われます。特にリズム隊にその傾向が顕著です。
ギターはJohn Petrucciのようにちょろちょろと動き回るフレーズを好むようです。ザクザクとしたフレーズから速弾きまで対応。キーボードはシンフォニックな演奏だけでなく速弾きも。ベースも単に速いだけではなくセンスが良くてその弾き方にはTony Levin志向が伺えます。ドラムも上手い。手数が多くベースとともに複雑なリズムを構成しています。
１曲目 T.R.I.P.
いきなりの大作。序盤さすがイタリアと思うようなアコギやシンセを中心としたシンフォニック。途中、初期のDREAM THEATERを思わせるような畳み掛ける展開を挟み、再びシンフォニックな展開に。終盤のギターソロとキーボードソロも良いです。
２曲目 Aenigma
KING CRIMSONを志向するような複雑に絡み合う変拍子。急激な場面展開。２ヶ所差し挟まれるピアノソロが良い。
３曲目 Distant
生ピアノと切々と歌われるヴォーカルを中心に展開されるシンフォニック作品。イタリアらしい哀愁と湿っぽさが複雑な楽曲と上手く合致して、個性的な楽曲となっています。湿っぽいDT、みたいな凡百のバンドとは確実に目指すものが違いますね。
４曲目 The Disoriented Oriental
緩急を生かした複雑なリズムのインスト。
５曲目 Red Sunsets On Earth
生ピアノによるソロを生かしたドラマチックな作品。見事。
こういうのも活動しているのね、イタリアには。このままバンドを是非継続して次作を出してほしいものです。アヴァンとシンフォの要素が強いので、おそらく多くのメタル･ファンからはちゃんと評価してもらえないでしょう。こういうバンドこそ、プログレのファンがフォローしていかねば。将来に期待したいバンドです。