ALOGIA

Secret Spheres Of Art

セルビア出身　手数が多くシンセ多用のプログレ・パワー

　これは珍しい・・セルビア出身のメタル・バンド。
　セルビアのメタル・シーンがどうなってるのかは知る由もないですが、ざっと聴いた感じでは悪くないです。おそらくは、正統派メタルを振り出しにドラマチックな展開を志向しているうちにプログレ・パワーに至った、という印象。ギターにはネオ・クラシカルの要素も。SYMPHONY Xに似てます。
　スピーディなタテノリのパワーメタル。普通のパワー・メタルを１．５倍くらいに早回ししたような錯覚を受けますね。キビキビと曲が進行している感じ。全員が手数が多くシンセが多用されています。メロディにも気を配っていて、曲の冒頭に印象的なフレーズ持ってきたりして工夫してます。
　バンドの志向性と演奏水準が現れてるのが１曲目Secret Spheres、SYMPHONY Xが好きな人には４曲目Legend of a Stolen Heart、メロディックな志向が出ている９曲目Beyond the Timeあたりがオススメでしょうか。
　プログレ度は高くありませんが、小粒ながらも良品。メロディとドラマチックな展開、スリリングさと分かりやすさ・・とバランスを考えた作品です。今後の発展しだいではオオバケするかも・・と期待してます。

LOCOMOTIVE LM197CD ('05)

Price O Zivotu

表現力が広がり　完成度も大幅に向上

　セルビアを代表するメタルバンドの多分２作目。ボーナスＣＤ付き（ＣＤ−Ｒ）。
　前作の項で「ひょっとしてオオバケ？」と書きましたがなんとそのとおりに・・いやそれ以上に化けつつありますよ。メロディも演奏も大幅に向上。プログレ・パワー、スピード、メロディック、ネオクラシカルなどなど、バンドの多彩さが前面に出ています。でも、芸風の幅広さを感じる一方、ホントは何がやりたいのかよくわからないなあ。
　大半が自国の言葉で歌われているけど違和感はなし。演奏とマッチしているからでしょう。ボーカルはメタルでもハードロックでも合う声質。朗々とした声で広域の伸びもよい。個別に各楽器の紹介してもよいのですがが、まあ芸風が広くとても一言では言い表せない。確実にいえることは前作よりもスケールアップしていることですね。

１曲目 Reditus
　アルバムのオープニングに配されたインスト作品。これがもう、堂々たるプログレ・メタルである。前半は情感豊かに、後半は走り抜けるような鮮やかさが素晴らしいギター、透明感と緊張感を併せ持つキーボード。DREAM THEATERとLIQUID TENSION EXPERIMENTの中間を行くような素晴らしい作品。

２曲目 Novi Dan
　DREAM THEATER風のプログレ・パワーをわかりやすくしたような感じ。旋律はわかりやすい反面、正確＆細やかなドラムには脱帽です。

３曲目 Trgovci Dusama
　DREAM THEATER風プログレ・メタルにスピード・メタルが合体。目の回るような展開です。

４曲目 Jos Samo Ovaj Put
　駆け抜けるようなスピード・メタルにプログレっぽさを足しこんだような音。抜けるように明るいメロディが特徴。

５曲目 Matamorfoza
　１０分を越える大曲。動的な部分は重厚プログレ・パワー、静的な部分は壮大なシンフォ・メタル調に。しかし、大曲やシンフォ・メタルにありがちな自己陶酔は感じられない。これは好感が持てます。ＡＯＲ風のボーカルのせいかな。

８曲目 Magija
　スピードメタル、プログレ・メタル、メロディック・ハードが交互に出てくるような構成が面白い。目の覚めるようなギターが主体。

１１曲目 Ambis
　テクニカルなスピードメタル。冒頭のギター・リフだけで圧倒されそう。複雑なドラムが緊張感と深みを曲に与えている。

１４曲目 30072003
　印象的なメロディを持つインスト。メタル＋フュージョン。ちょっと変わったジャンルをやってもそつなく出来ますね。

　いろんなタイプをやってるのは、やりたいことがたくさんあるからでしょうか。クオリティは飛躍的に上がっているし、なによりもプログレ度が増しているのはうれしい。次作は大飛躍するか問題作作るかどっちかでしょう。
　それにしてもこんなバンドがいるなんて。セルビアは要注意ですね。他にもプログレ・メタル系がいるかもね。


　さて、ここからはボーナスＣＤについて。
　どうやらメンバー各自が１曲づつやりたいものをやったという印象。本編ではさまざまなメタル曲をやっていたのに、こちらではメタル色が弱いのが面白い。

　ボーナス１曲目 Gde Si U Ovom Glupom Hoteluはメロディック・ハード。キャッチーなフレーズがあって、フックになっている。そっち方面でも十分やっていけそう。
　ボーナス２曲目 Summer Night Romanceはメロディアスなギターを中心とするインスト・ハードロック。Patrick Rondat風。
　ボーナス３曲目 Before The Leaving はダンサブルなプログレ・ハード。ギターのリフや、曲展開はSAGAを手本にしたような感じ。SAGA好きなのね、きっと。なかなかいい出来です。
　ボーナス４曲目 Satin Doll なんとジャズ。流暢な英語、ゴージャスなビッグ・バンド風ジャズ。こんなメタルバンドあるかい？　なかなか楽しいです。

　さすがに、こっちのボーナス盤はお遊びの要素が強いが、しかししかし、彼らのバックグラウンド広さ、音楽的引き出しの多さがよくわかります。さまざまな要素が交錯しあい、今後もステップアップしていくに違いありません。やはり期待は大なのだぁ。

ONE RECORDS