AZTEC JADE

Modern Prophet

プログレ・ハード／メタル　演奏と録音はイマイチだがメロディには期待が持てる

　アメリカのインディペンデント系のシーンで地道に活動しているプログレ・メタル。実力としてはまだまだの部分もあるが、本人達がインターネットのいろんなサイトに出没することで有名。
　知り得る限り現在まで３枚程度のアルバムを残していて、恐らくこの作品がデビューになるものと思われる。全くの自主制作モノらしく、デモっぽい演奏と音質。
　モダン・シンフォに共通するような分厚いシンセに、ギターが絡むという構成。基本的には歌モノばかりで、分かり易いメロディが中心のＢ級メロディック・ハード、と言えば怒られるかな。メタル色は少な目で、ASIAやSAGA、RUSHなどを手本とした、一風変ったメロディック・ハードという趣き。演奏にモタリが感じられるものの、コマーシャルなメロディにメタリックなアクセントをつけているあたりの志向性は捨て難い。
　１曲目Modern Prophetと２曲目Dirty Secretsは広がりのある音像を生かしたメロディアスな楽曲。ちょっと歌謡曲的かなと思えるくらいコマーシャルな音。３曲目Soul Inside Of Meや４曲目The CreatorはFATES WARNINGタイプをややポップにしたような感じ。そして５曲目Indian Summerと６曲目Odyssey・・これらの曲の出来がちょっといい感じ。プログレ・メタルとしてのメリハリもあるし、構成もヒネリが利いてる。
　まあ、出来の良いデモという感触は払拭できないものの、バンドの音楽性の深さを感じさせるには十分な作品。テンポがみな同じだったりするのには苦笑したけど。キチンとしたプロダクションで作れば化ける可能性は十分。要チェックかな。

CMG 9506-2 ('95)

Concrete Eden

０３年リリース　米プログレ・メタルの隠れた名作

　成長著しい。これはなかなかの佳作。

　ここで聴きとれる彼らの要点を３つにまとめると、まずかつてのDREAM THEATERに近い重厚かつ精密な演奏力、次にメロディを大切にして聴き手の印象に残るフレーズを配置し、そしてプログレ過ぎずメタル過ぎずメタル演奏に少しプログレ展開を持ち込む・・といったところ。
　メロディラインはキャッチーではないが、かなり上達している。かつてはやたらとコマーシャルなフレーズがあったが、ここではダークでパワフルな演奏と上手くマッチしながら確実に聴き手の耳に残るフレーズ。
　ゴツゴツした強力なリズム隊とパワフルなボーカルがまず耳につく。上手くアピールする音だ。ギターはソロも弾くがむしろアンサンブルを重視するタイプだ。そしてなによりもほぼ全編に渡って流れるキーボード・・・特にピアノとオルガンが目立つ。プログレ側の人間としてはこれは嬉しい。
　曲の展開力は飛躍的に向上した。キレのある演奏力のおかげでドラマチックになった。スピード感はないが、ジリジリと高みに追い詰めていくような曲展開が得意。

１曲目 Concrete Eden
　初期のDREAM THEATERを感じさせるパワフルでテクニカルな演奏。メリハリを利かせた演奏力は過去の作品で実証済みだが、歌部分はシンプルに、インスト部分はやたらと技巧的にバシバシ決めてくれる。２分過ぎからの展開にはしびれる。
３曲目 Black October
　プログレッシブ・パワーはこうあって欲しい、というお手本のような曲。暗雲が立ち込めるような情景に響き渡るエモーショナルなギター・・いいねえ。暗い音色のシンセはKevin Moore風。メロディラインはキャッチーではないが印象的。
４曲目 Someone, Not Me
　それまでの暗い風景がさっと晴れ渡るかのような、柔らかなバラード風。サビの部分の美しいこと・・印象的なフレーズに乗って歌い上げる部分には独特の浮揚感があって、琴線に触れる。アルバムで最も好きな曲。名曲。
５曲目 Manifestation
　イタリアのようなシンフォニック・メタル風。中間部にはアコースティック・ピアノの弾き語り風も挟んでドラマチック。ややクサいフレーズを含んだメロディがいかにもイタリアン・バンドにありそう(笑)
７曲目 Visions
　勇壮で荘厳な雰囲気。ピアノがジリジリと情感を盛り上げ、シンセが緊張感を煽る。９０年代前半のDREAM THEATERを再現したかのよう。次々に曲調が変転していくインストも素晴らしい。ボーカルが朗々と歌い上げるさまもかっこいいぞ。
９曲目 The Final Hour
　変拍子を交えながら、スリリングでダークなプログレ・メタルが展開される。
１０曲目 Issues
　あまり目立たない曲だけど・・・ラストの１分半ほどの展開が大好き。
１１曲目 End of Days
　１２分を超えるシンフォニック・メタル大作。次々と曲が変貌していく重厚な物語。DREAM THEATERやQUEENSRYCHEに肩を並べるような構成力。プログレッシブな要素が比較的少ないのは残念。

　かなり良いのではないだろうか。ニューヨークにAZTEC JADEあり、と言っても差し支えない、一角のバンドに成長した。ちょっと地味かなあと思いつつ聴くうちにどんどんその良さがわかってきた。次作ではさらなる飛躍を望む。もっと派手にやってください。

STEELHEART STH0202 ('02)