いやー いいですねえ。まぎれもなく８０年代に全米チャートを席巻した産業ロックです。本国ではとうに廃れて表舞台から消え去ったわけですが、北欧から良質なメロディック・ハード作品が次々と出てくるという昨今の状況・・・これはメロディックのファンには嬉しいばかりです。彼らKHARMAはYngwie Malmsteen、最近ではSTREET TALKにも参加しているGoran Edmanを中心としたプロジェクト。
力強く張りのあるEdmanのヴォーカルと分厚いコーラス、目立ち過ぎず適度にハードな演奏をする職人的なギタリスト、広がりのある音で曲の厚みをつけるキーボード。
メロディは典型的なメロディック・ハード／ＡＯＲハード。この手が好きな人すべてに迎えられること間違いなし。カラっとした作風にも好感が持てます。
１曲目Free Yourselfは８０年前後のアメリカのチャートに出てきそうな音。ＡＯＲハードらしいシンプルなメロディ。２曲目Wonderlandと３曲目Knowing YouはSTYXを一瞬思い起させるような明るいオルガンとピアノ。そしてQUEENばりの分厚いコーラスが印象的。４曲目Burn Foreverはそれまでの明るい雰囲気から一転、ドラマチックなメロディと長めの展開に。
５曲目In Chains、１０曲目Spell On You、１１曲目Don't Close Your EyesはFOREIGNERタイプの楽曲。フックの利いたメロディと、聴く者を締め上げるようなカリカリとした音像がいかにもFOREIGNER風。７曲目はややブルージィな雰囲気のあるメディアムテンポの曲。アメリカ南部系に近い音だが、アメリカのバンドなら間違いなくギターを利かせた重ぉく渋ぅく演奏するところ。しかし、ここではキーボードに比重を置いているところが新鮮。中間のハモンドのソロがかっこいい。
８曲目Angel EyesはJOURNEYがやりそうな情念的なこてこてバラード。メロディック・ハードのお約束、演歌ＡＯＲ（笑） それにしてもEdmanの声の伸びは素晴らしい。この手のメロディックにはぴったりの人材。
９曲目Ray Of Sunshineは驚きのプログレ・ハード。冒頭、フルートとピアノがフィーチャリングされ、少しだけど変拍子が差し挟まれ、そのスリリングな展開に思わず身を乗り出しそうになる。そして、メロディはもろKANSAS。それだけでなく、ギター以上に活躍するピアノ／オルガンといい、コーラス・ワークといい、６分以上に渡るドラマチックな構成といい、まさにKANSAS。KANSASファン必聴。えーなー これ（笑）
１２曲目Hold Onは８０年代メロディック・メタル風。幅のある音を構築していて、ギター、キーボードそれぞれのソロが印象的。よくあるメロディなんだけど、やはりついつい聞き入ってしまう。
１３曲目Wings Of Historyはラストを飾るにふさわしい、ドラマチックなバラード。メロディック・ハード寄りの展開。
１４曲目Cold As Iceは日本盤ボーナストラック。FOREIGNERの同名曲とは別モノなんだけど、曲の雰囲気はよく似ている。本編から外されているのが残念なくらい良くできている。ちょっとラフ＆ワイルドな仕上がりになっているのが理由かもしれない。初期のFOREIGNERを彷彿とさせるかっこよさ。Edmanの声は曲によってはFOREIGNERを連想させます。
メロディックな単純明快で憶えやすい一方、飽きが来やすいのも事実。この手の楽曲は、良くできている曲ほどどうしてもどっかで聴いたような気分になってしまう。また、１４曲も収録されているとアルバム後半はやや冗長に思えてくる。ちょっと目先の変ったことこともして、変化をつける努力はしているのはわかるけど。
その部分を割り引いても、メロディック・ハードの力作であるに異論はありません。本家アメリカではとうにシーンから姿を消してしまった、この手の楽曲を、さらにスケールアップして聴かせてくれている。特に冒頭の３曲、そして９、１０、１２曲目は大変気に入ってます。