イタリアでは、パワー系シンフォニック・メタルの先駆的存在であったBLACK JESTER。その中心メンバーがHELREIDHのメンバーを引き入れて新たに結成したのがこのMOONLIGHT CIRCUSだ。これはその１枚目に当たる。
かつてのアルバムタイトルをバンド名にするということから、音楽性は前身を継承しているんだということだろうか。
新しいヴォーカルは前任者のようなモゴモゴとしたタイプではなく、中音に張りのあるタイプ。ドライな声質はバンドの印象を良くしている。
音のほうはパワー・メタルを基調とするが、よくあるパワー一辺倒の単調な展開ではなく、テクニカル／プログレっぽい部分を若干感じさせながら、抑揚や場面展開にこだわる面を見せる。そしてここぞというところで、高速ギターソロが出てくるという構成。
メロディの方は以前と同様に暗く湿っぽいタッチのものが多い 。隠滅たる雰囲気に、ちょっとシンフォ風シンセが加わるという感じ。一口で言えば、湿っぽいパワーですかね。ただし、バンドの新機軸を感じさせる曲もある。
そのうちの１曲は４曲目"Whirls Of Past"。痛快なドラミングとツボを得たギターソロ。他のトラックとは異なり、タテノリのパーカッシヴな曲。別のバンドみたい。そして７曲目すなわちファイナル・トラックに収められた"Outskirts Of Reality"は１１分に及ぶ大作。前半こそ粘着質のメソメソ・メタル・・でも、ここでタメにタメといて(笑)、４分半あたりから、一転して弾けるようなスピード感とスリリングさ満載のドライヴ感が楽しめる。途中シンフォニックなシンセ＆フルートも登場。この曲（だけ）はたしかにプログレ・メタルとして十分な出来。
全体的に暗ぁいトーンではあるけど、以前のような、メタルの辺境地でがんばって作ってきました、みたいな（失礼）クラダサ系から脱却している。もともと演奏力はあったんだけどプロダクションとか、メリハリがイマイチだったのよね。その部分はかなり改善されているし、より硬質な音でまとめることで多くの人にアピールするようになったかな。プログレとして聴くにはもうひとつ物足りないが、よくあるパワー系プログレよりかは遥かにおもしろい。
それにしても、最後の曲で聴けるハジケっぷりはどうしたことかいな。まさに新境地。次作はこの手曲を増やしてほしいぞ。