９４年アメリカ。現ドラムのパット・マステロットやギター・クラフツなどのメンバーを含むクリムゾンファミリーによるバンド。８０年代クリムゾンをベースとして、プログレメタルやジャズロックを持ち込んで独自に構築・・・って書くと難しそうだけどが、実に聴きやすいんですよね、これ。アヴァンっぽいんだけどメロディが分かりやすいあたり、アメリカ人らしい音。曲毎にアイデアが盛り込まれて飽きることがありません。個人的には名盤入りかと。で、調子に乗って全曲を簡単に紹介します。
１曲目Darkはテクニカルなギターに叙情的なピアノが絡む変拍子作品。冒頭、アヴァンなロングトーンのギターが鳴り、このまま続くのかなと思わせて突然POLICE風のリズム隊が入って曲が動き出します。この瞬間が気持ち良い。
２曲目Sardukarは、彼らのルーツをもろ出しにしたまるっきりクリムゾンな作品。Rober Frippになりきったようなギタープレイ・・・しかもギターは幾重にも重ねられています。
３曲目Angstは８０年代KING CRIMSONがメタルをやったような感じ。実にハイテンション。変拍子の応酬は超絶ジャズロックにも通じるようなテクニカルさ。これも面白い。
４曲目Enough's Enoughは一転してスローな曲。枯れた感じのバラード。コーラスも面白い。でもよく聴くとベースがヘンな音を出している。これがまたいい。
５曲目The Policeman's Ballが最もメタルよりの作品。様式美タイプのギターだがバンドの音は隙間だらけだったり、ブルースっぽい展開になったり、途中から高速ジャズ・ロックに変ったりしてこれまた飽きることがありません。
６曲目The Spectacleはかつてのクリムゾンがやったようなポリリズムっぽい展開からはじまる５拍子。複雑な構成なんだけどメロディラインはいたってポップ。Three Of A Perfect Pairの旧A面にでも収録されてそうな、ポップと複雑なリズムが組み合わさった作品です。このアルバムのハイライトかな。
７曲目Orphanはエスニックなリズムが印象的。ちょうどTALKING HEADSに似て、変に「明るく楽しい」感じ。ポップだが不思議。印象的です。
８曲目Assault On The Consensusが９分に及ぶ７拍子作品。序盤はメタリックなギターとオルガンのバトル、中間部はAllan Holdsworthっぽいプログレフュージョン、最後はヴォーカルも加わってシンフォニックな展開に。
で、なぜか９曲目Redemptionだけがアンビエントな作品。これだけなんか異質。悪くはないけどね。最後の最後で意外な選曲・・
このアルバム、異質なものが絶妙の均衡で同居しているようなところが魅力です。アヴァンとポップ、硬質と泥臭さ、ジャズとメタル・・いやー これはいいですよ。ディスクユニオンで大量に安売りされている（中古盤でたいてい８００円とか）のが信じられん。ちょっと変ったプログレ・メタルが聴きたい人、８０年代KING CRIMSONが好きだった人は拾ってやってください。メタルのコーナーよりもプログレのところに置かれていることが多いです。