コアなフュージョンと技巧派ギターの合体したプログレメタル
＜フュージョン + プログレ・メタル＞ テクニカル系の最先端なグループのひとつ。多彩な技を持つギタリストRon Jarzombek（ex-WATCHTOWER）を中心とした３人組によるインスト作品。こういうのはヴォーカルが無いほうがいいよね。音のほうは当然（笑）メロディックではなく、ちょっとアヴァンでコアな音です。
冒頭から、疾走するリズム隊の上をテクニカルなギターが舞う。ある時はSteve Vaiのような空気を切り裂きながら、またある時はAllan Holdsworthのようにひらひらと漂いながら・・・クルクルと表情を変えながら変拍子のリズムで曲が進んでいく。このギタリストはいろんなスタイルを身につけています。ひとつの曲のなかでもいくら表現してもし足りないと言わんばかりなほど饒舌。派手なギターに隠れているが、ベーシストもかなり歌うタイプで、手数が多い。
メロディックではない、と書いたが確かに曲の最初から最後までを統括する主旋律は内に等しいけれど、断片的に奏でられるギターのメロは時に印象的。
彼らのように、フュージョン、プログレ、メタルのテクニカルな部分を吸収し独自の方法論で纏め上げる、というのがテクニカル系ロックの中心になってきた感があります。プログレとメタルの融合が一段落したら、次はジャズ・ロック／フュージョンとの融合か・・・DREAM THEATERがフュージョン的な要素を取り入れた曲（"Trial Of Tears" from Falling Into
Infinity）をやっていたけど、トレンドはそういう方向に向かっているようだ。この作品を聴いていると、これからどんどん凄いバンドが出てきそうな予感がして嬉しくなってくる。
同じ系統としてはPROMETHEUSやEVENTが人気だけど、彼らよりもコアな感じ。やや難解ですが、最近のテクニカル系に耳が慣れてきている人は必聴でっせ。
前作の延長上 予想どおりの音でちょっと不満
Sean MaloneのプロジェクトGORDIAN KNOTはメタルもフュージョンもニューエイジも吸収した超絶テクニカル･ロックの傑作でした。そして、そこで素晴らしいギターを披瀝してくれたRon Jarzombek。SPASTIC INKの前作Ink Completeでの疾走感溢れる演奏とはまた違った深みを見せてくれました。彼にはジャズの要素が強いフィールドのほうが面白いなと確信しましたね。
で、そのプロジェクトを経て作られた本作。どうなってるか、すごく興味深かったのだが・・うーん、Ink Completeと一緒ですね。むしろ、フュージョン的な要素は減ったように思える。
目の回りそうな展開は健在。今回はボーカルも入れてさらに深みが増してます。ボーカル入りとはいえ、ポップになるような連中ではないですが。
１曲目Aquanetが一番技巧的に凝っていておもしろい。次々と繰り出される変拍子、フレーズがどんどん変わって行くさま、ベースの活躍、ＳＥなど・・さすがSPASTICであるなと。刺激的です。
２曲目、３曲目と面白いもののさすがにハードすぎてつらい。やはり１曲目に尽きるか・・と思ってたら７曲目In Memory Of ...もなかなか。ギターとベースの掛け合いもあったりして。とりわけ変化に富んだベースのフレーズが楽しいです。
もうちょっとフュージョンよりでハチャメチャにやってほしい、と思ったのは私だけでしょうか。Jarzombekには、ジャズのフォーマットでの作品を希望。メタルと前衛とフュージョンを合体させてPLANET X周辺を凌ぐような作品ができること間違いなし。そうなったらモロ好みなんだけどなあ・・・