AYREON関連プロジェクト。Arjen Lucassenが歌姫Marcela Bovioをフィーチャリングしたゴシック・メタル。AYREONからはスケール感と劇的な展開を引継ぎ、Marcela Bovioの圧倒的な歌声が乗り、そして全編に渡って儚げなピアノとシリアスなストリングスが・・うーん、とても贅沢な取り合わせです。なんといってもMarcela Bovioの歌声です。その美しさには身震いするほど。歌声の透明感そして情感を込めた歌唱は比類ないものです。それだけでなく歌声に「力」があるんですよ。矢のようなベクトルというか・・・耳から離れません。これだけの人材はメタルだけでなくプログレ界にもちょっといないのではないでしょうか。
ゴシック・メタルといってもこれだけプログレッシブなものはなかなかありませんね。ゴシックは苦手というプログレ・ファンにも納得してもらえる出来ではないでしょうか。いや、類型的な他のゴシックとは方向性も異なりますね。さすがArjen Lucassen、メロディ、情感、ダイナミズム・・突出しています。妥協がありません。
１曲目 Spellbound
冒頭からサスペンス映画のようです。幾重にも重ねられたパーカッション、ダークなストリングス、そしてドラマチックなピアノが響きわたった後に、ヒロインが登場です。躍動する大地に孤高ごとく響き渡るボーカル。AYREONの圧倒的な音圧、Marcela Bovioの絶対的な存在感。この１曲目で私はノックアウトです。
２曲目 Passion
このテンションの高さといったら・・躍動する演奏の上を、弧を描くように力強い歌声が舞います。聴いていて思わず握った拳に力が・・・終盤に音が走り出すところも感動。
４曲目 I'll Keep on Dreaming
バラードで始まり、やがてシリアスな音へと変化していく。ピアノとストリングスの作り出す、この緊張感と深み。イコライジングされた歌声とリズムもドラマチックです。
７曲目 Open Your Eyes
悲しげなメロディと劇的な展開のバラード。こんな起伏のあるバラードは初めてです。思わず感情を移入してしまいますね。一音一音が愛しく感じられる名曲です。
８曲目 Embrace the Storm これ、まるでAYREONですね。勇壮な演奏が心に響きます。
１０曲目 Out in the Real World
ラジオ向けかな、わかりやすい曲です。キャッチーなフレーズを配し、巧みなボーカルとドラマチックな演奏をアピール。
１２曲目 Calliopeia
ラストの曲は、イコライジングや打ち込みを持ち込んだポストロック風味。硬質なサウンドに変拍子も交え、カリカリとした緊張感が絶品です。
参りました・・AYREONがゴスをやったらこうなるのですね。曲ごとに趣向があり、聞かせどころがあり、何度聴いても飽きません。いや、聞くたびにその完成度の高さと才能を思い知らされるばかりです。
AYREONにはシンフォニックになりすぎて焦点がぼやけた散漫な曲も見受けられるのですが、このアルバムにおいてはそれは微塵もありません。透明感を併せ持ちながらも、まっすぐに飛んでいくような強烈なボーカルはAYREONの完成度をさらに高いところへ持ち上げています。いい作品をきいたな、というのと同時にこれで他のゴシック・メタルが聴きたくなくなるかも。
AYREONが好きな人、ゴシックが好きな人は迷わず聴いてみてください。女性ボーカルが好きなプログレ・ファンにも是非。