Tony Banksが元WANG CHANGのJack Huesをヴォーカリストとして迎え入れたポップなソロ・プロジェクト。ほとんどのパートがBanksのシンセで埋め尽くされている。打ち込みも多い。GENESISのソングライティングに通じるメロディライン。GENESISで聴いたようなフレーズがたくさん出てくるぞ。普通、ソロ・プロジェクトだったら敢えて違う線を狙いそうなものだが、このそっくり具合は「やってるうちになんとなく似てしまった」というよりは、確信犯かも？ 敢えて「GENESISのポップ資質は自分もしっかり担っていたんだぞ」と言いたげな感じ・・・まあ、いいでしょう、品の良いメロディラインで良質なのは間違いない。特に前半の数曲はポップさ全開。GENESIS特有の、ゆっくりだけど畳み掛けるリズム展開にファンキーさが加わった１曲目Don't Turn Your Back On Me、同じく鍵盤奏者でソロ転向後大成功しているSteve Winwoodを思い起こさせる曲調の２曲目Walls Of Sound、Alan Parsons風の都会派バラード５曲目Never Let Me Know・・・こういった楽曲はかなり上質の英国ポップ。また、印象的なフレーズでフックの効いた９曲目Strictly IncongnitoはGENESISをさらにファンキーにしたような感じ。ヴォーカルがPhil ColinsだったらGENESIS・・・というよりむしろColinsのソロのようだ。いい曲。ラストの１０曲目An Island In The DarknessだけがGENESISも真っ青の大作に仕上がっている。
残念ながら、打ち込みの多用がせっかくのソングライティングの良さをぼやけさせてしまっているように思う。Banksのほかのソロもそうなんだけど、あれだけの気品のあるピアノが弾けるのに、どうしてわざわざ味気ない音色に置き換えてしまうのか・・・恐らくある程度を直接鍵盤から入力しているのにも関わらず、だ。どうも、ファンに自分の良さをアピールできるかを読み間違えているんじゃないか。これだけのメロディ、もっと打ち込みを減らすべきだったと思う。それと鍵盤至上主義に陥らずもう少し外部のゲストを上手く配置していれば、かなりのバランスいい作品が出来ていたと思えてならない。