メキシコを代表するシンフォバンドCASTのリーダーのソロ。キーボードを幾重にも重ねたシンフォ。クラシカルな要素の強いメロディック・シンフォ。歌入りの曲もあるが大半はインスト。リズムを含めて一部のシンセは打ち込み。打ち込み特有の、硬質で不躾な質感がアルバム全体に漂っている。
正直なところ、出来のいいデモ・テープ並みのプロダクション。のっぺりした音像や地味な音色、雰囲気ぶち壊しのボーカルに最初はがっかりするのだけど（シンセなのにどの曲も音色が一緒！）、聴き進むうちにそれを補ってあまりあるメロディラインの美しさに魅了される。ENIDをデジタルにしたような感じかな。無愛想な打ち込みドラムや薄っぺらなシンセの音色に慣れ出した頃にその珠玉の美しさに気づく次第。心が和らぐ。いやー これでサウンドデザインがしっかりされていればなー 奥行きのある世界に美旋律が乱舞するクラシカル・シンフォになっていたかも。もったいない。
中間部のハープ調音色が美しい２曲目Stars、クラシカル調の美しさがCASTの雛型のような５曲目Guirbar、賛美歌に通じる神々しいメロディが魅力の１０曲目Wedding For A Friend、バロック調の１３曲目Record Muteなどが秀逸。特に１０曲目のメロディは名曲と呼ばれても良いくらい素晴らしい。
最後に一言。歌は余計だったんでは？