DIXIE DREGSの全盛期を支えたベーシストAndy Westのソロ・プロジェクト。MAGNA CARTAお得意の、同レーベル周辺メンバーをずらりと揃えたもの。参加メンバーは実に豪華。ギターにはメタルとフュージョンの橋渡し的な作品には数多く関わっているMike KeneallyとToshi Iseda、ドラムにはTHE DREGSでの盟友Rod Morgensteinとご存知Mike Portnoy（DREAM THEATER）、さらには懐かしいJonathan Mover（GTR、MARILLION）。鍵盤はJens Johansson、T Laviz(THE DREGS)、Kit Watkins（CAMEL、HAPPY THE MAN）で肝心の音のほうだが、これがテクニカルなフュージョンにへヴィロックを持ち込んだような問題作。CYNICやSean Malone関連の音とも違う。KING CRIMSONや北欧前衛ジャズロックタイプのアヴァンな要素をふんだんに取り入れていて、個性的な作風になっている。DIXIE DREGSのメンバーという経歴からは予想できない作風。
１曲目Mad Marchは聴きやすく彼らの音楽性がストレートに伝わる佳作。アヴァンなフュージョン展開にへヴぃな二本のギターがうねる。
２曲目へヴぃなサウンドの上をJens Johanssonのキーボードが高速でウネる。彼のソロ作Fjaderlosa Tvaforingarを思い出すような音。
３曲目Herd InstinctはKING CRIMSON傍系のプロジェクトのようなサウンド。管楽器とピアノ／キーボードを迎え、北欧の前衛ジャズバンドがメタルに迷い込んだような音に仕上がっている。ここにJensは参加していないが、彼の作風にも近い。決して聴き易くはないが、面白い曲。
６曲目Memento MoriはTHE DREGSに前衛プログレを混ぜたような音・・あまり上手く言えないが、Jens Johanssonにも近い作風。プログレッシヴだが、ジャズの素養がないと出てこないであろう音。ハードコア・フュージョンがへヴィロックと合体したような音。DIXIE DREGSの盟友T Lavizが参加。
８曲目Governmentはフュージョンとメタルを足しこんで、ミディアムテンポの変拍子仕立てで構成されている。KeneallyとIsedaのウネるギターが干渉しあいながら目の回るような世界を作り上げている。
９曲目Resonateはフリージャズ〜コア・フュージョンのスタイル。複雑なリズム隊とKit Watkinsのピアノの絡みがいいなあ。マニアックだけど聴きやすい。
技巧＋前衛。ソリッドな感触は好みの別れるところだろう。聴きやすい１曲目、次に８、９曲目から慣らしていくのが本作のとっかかりとなりそうだ。Jens Johanssonのプログレ寄りの作品が好きな人なら即気に入られそうだけど。
レーベルの特性上、メタル・ファンの耳に触れることが多いであろう本作。むしろアヴァンなジャズを聴いている人に注目してもらいたいと思う。