John Elefante

Corridors

元カンザスのヴォーカルによるクリスチャン・ロック

　ご存知、元KANSASのボーカルのソロ作。ＡＯＲハードのMASTEDONでの活動やサントラの仕事を経て、現在はクリスチャン・ロックの世界で活動中。クリスチャン・ロックのシーンが日本で紹介されることがほとんどないのだけど、向こうではそれなりの市民権を得ていて、ジャンルとして確固たるものになっているようだ。彼もその世界でかなりの人気者だし、他のクリスチャン・ロックの作品にもプロデューサとして参加していて、かなりの実力者として認知されている。
　さて、このアルバムの魅力は１曲目のタイトル曲に尽きるといってもいい。KANSASをメロウにしたような印象の楽曲で、メロディラインのあちこちにKANSAS的なものが感じられるのだ。
　他の曲もＡＯＲとしては上質で、メロディもいいし、雰囲気もいい。どこか朗らかでポジティブな印象を受けるのは、やはり宗教に起因する高揚感や癒し的な要素が含まれているからだろうか。透明感のある音が清々しい。
　ヴァイオリンを使った曲もあり、KANSASを意識していないといったらウソになるかもしれないなあ。でも、それだけではない。John Melencamp風あり、８０年代メロディックあり、とバラエティーにも富んでいる。そして卓越したソングライティング。８０年代の全米ヒットチャートをこよなく愛していた人なら、この作品もきっとフェイバリットになるんちゃいまっか。

PAMPLIN PMCD9701 ('97)

Defying Gravity

往年の８０年代ＡＯＲ・ハードを髣髴させるクリスチャン・ロック

　今もクリスチャンロックの世界ではプロデューサとしても活躍している、元KANSASの ヴォーカリスト。KANSAS脱退後は自らのバンドMASTEDONを率いていたが、ここ数年はソロ名義の活動を継続している。これが何枚目のソロに当たるのかは不明。
　KANSASではSteve Walshの代役としてヴォーカルを務めるだけでなく、バンドに対し多くの楽曲を提供し（正確には実弟Dinoとの共作）、コンポーザとしての才能を知らしめた。その結果、彼が参加したアルバムVinyl Confessionは大ヒット。
　さらに、KANSAS参加２枚目に当たるDrastic MeasuresではそれまでのKANSASからは想 像できないような曲調の作品を書き、賛否両論はあったがその作風の広さには驚かされ た。しかし、その後の活動環境はあまり恵まれているとは言えず、彼もまた器用貧乏な ミュージシャンなのかも知れない。
　ここで聴かれる曲は、８０年代のアメリカで聴かれた音に近い。メロディックへの回 帰やＡＯＲ再評価の機運が高まる昨今、Brian AdamsやFOREIGNERらしさを漂わせるこのアルバムの楽曲は確かに心地良い。アメリカらしく、明るくおおらか…そして印象的なメロディ。そして伸びやかな声。もちろん、歌詞の中身は濃い濃い宗教的メッセージなのだけど。
　ヴォーカルスタイルは曲の持っている雰囲気に合わせて変化させている。まるで別人 かと思えるような曲もあったりして、この辺りの変貌具合もなかなか凄い。
　典型的なメロディック／ＡＯＲ調のわかりやすい旋律だが、厚めのシンセをかぶせた り、得意の多重コーラスを使ったりしてそれなりの変化を付けて仕上げている。特に、 ２曲目のシンセ・ソロ、３曲目の一瞬KANSASを彷彿とさせるヴォーカルスタイルが 印象的。
　メロディックものとしても楽しめる内容だと思う。ただ、全体的にはゆったりとした 曲が多いため、KANSASでの彼を知るものにとっては物足りなさが残るのも事実。どうし ても比べてしまうなあ・・

FRONTIERS RECORDS / NOW & THEN / NIPPON CROWN CRCL-4520 ('00)