憧れが先行する雑然シンフォ
８５年のデビュー作Fourtunesに続く２枚目らしい。カセットとＬＰでリリースされた。アメリカ・プログレ怪人Nick Peck（キーボード）が在籍したことで有名（？）だけど、彼は本作から参加。
作風はYESをノンビリ＆チープにしたような牧歌調シンフォ。ダウナー系DRUIDという気もする。繰り返しが多く、正直、習作の域を出ないかと。プログレ大国アメリカにありながら辺境シンフォのような作風ですね。
YES系シンフォだけでなく、技巧派インストやフォーク調など、いろんなタイプの曲に挑戦していますが、とっちらかたような雑然とした印象です。しかし、この努力が４枚目Starlight Talesで結実、個性的な良質シンフォにオオバケします。
ＬＰとカセットだけでリリースされたことは上述のとおり。４作目Starlight Talesがなかなかの出来だっただけに本作も長いこと探していたのですが、ななんと、Nick Peck本人のサイトで全曲ダウンロードできてしまう。なんのこっちゃ。このページ右上のリンクからどうぞ。
独特のセンスを持ったシンフォ
ピアノを中心としたアコースティックなカリフォルニアのシンフォ・バンド。90年代のバンドなのに、音はまったく７０年代の音。
アコースティック楽器を多用したインストパートと、牧歌調・・というよりまるっきりフォークなコーラス。インスト部分の比重が大きい。みなテクニカルで生ピアノはスリリングだしKING CRIMSONやYES的な雰囲気もあるのだけど、コーラスが始まると途端にフォークになる。素人っぽい歌唱が素朴で懐かしさを感じさせる。フルートも参加。ちょっと濃い目のSOLSTICEとも言える？
プロダクションが弱くて音に厚味が無いのが残念。しかし、薄っぺらさがいかにも７０年代っぽい演奏に良く合う。自主録音なのかもしれない。
１曲目"The Ship"は生ピアノを中心とした
DRUID調の牧歌的な展開だが、流れるようなピアノと畳み掛けるようなドラムの絡みがスリリング。曲構成は
YESを思い起こさせ、70年代風のアコースティックなシンフォというところ。この心地よさはAnthony Phillipsも連想される。
２曲目"Grey Matters"は５拍子やメロトロンの上に６０年代メロディが乗っているという不思議な組み合わせ。初期のビートルズが好んでカバーしていそうな哀愁溢れるポップス。決して上手くはないが曲に合うコーラスがいい雰囲気出してる。しかしインストパートに入ると演奏は凄い。ギターもオルガンも７０年代ハードのような速弾きソロが出てくる。いいですよ、この曲。
３曲目"Bobby In The Bushes"はキーボードとFripp調のギターによるインストでCRIMSON的な展開。目まぐるしく変るキーボードの音を追いかけるだけでも飽きない。
４曲目"Pinnacles"はボーカル曲。フォークソングスタイルのアコースティックナンバー。シンフォニックではないが、素朴なメロディは悪くない。
５曲目はアルバムタイトルである"Edge Of The Sky"。14分に及ぶ大曲。アコースティックで始まり女性ヴォーカルによる牧歌調の展開から、中間は70年代のYESをダークにしたようなインスト・パートで、典型的なシンフォスタイルのキーボードが印象的。よくあるシンフォ・バンドのようではあるがドラムスがどこかエスニック風であったり、コーラスにみられるフォーク的な要素、そしてなによりも美しい旋律が、他のバンドと一線を画している。まるで英国のバンドのようだ。アメリカのシンフォは懐が深い。
６曲目"Barriers Of Attitude" 美しいピアノを中心とした小品。典型的なシンフォだがメロディが良い。
７曲目"Dead Fish In The Tank" 1分程度の短い曲。アコースティックギターによる弾き語り。
８曲目"Hesperates Rising" 24分の大作。4部構成の組曲。女性Voによる牧歌調で始まり、インストパートはアコースティック版YESといった趣の緊張感。歌パートはJon Andersonが書くようなメロディ。中間には長いインストパートがあって、これがCRIMSON＋YESという印象。やや冗長な感じもするが終盤はドラマチック。
シンフォなんだけど、それだけで終わらない魅力があって結構好きなこの作品。メンバーのプロフィールとかはよく分からないけど・・・