スペース・メタルである。その名のとおり、左右のスピーカの奥から届いてくるような分厚い世界観と広がりのある音が素晴らしい。でも、AYREONもそうだったよなあ？ スペイシーでドラマチックで・・さて、どこが違うのか。今回のプロジェクトがAYREONに代わるものなのか、あくまで平行する別プロジェクトなのかは知らない。が、少なくとも今回はメンバーを絞ってLucassen中心に求心力のある音になっている。参加メンバーが豪華かつ多数だったAYREON・・・最近の作品は正直、収拾がつかなくなっているように思った。Lucassen本人のイマジネーションを具現化するはずのプロジェクト・・しかし、多数の参加ゲストと、そのゲストに自由に弾いてもらってテープを送り返してもらうという方法論が仇となって求心力が低下してしまったように思う。そのため近作は散漫な印象が否めない。
２枚組、２作同時リリースと量的には肥大化していくのも、ある意味、その勇気を賞賛されるべき冒険かもしれないし、作風を広げるのは悪いことではない。が、肝心の作品の「完成度」と「締まり」という意味では本作のほうが高い。AYREONの無駄な部分をばっさり切ったような潔さが嬉しいのだ。
シンフォニックな要素は減った。それでも、初期のAYREONにあった痛快さを取り戻している。広がりのある音とスリリングなオルガンがプログレ・ファンをつなぎとめてくれることだろう。
そして、どの曲もいい出来だ。
２曲目Set Your Controlsはスリリングなオルガン系の音がいい。シンプルなフレーズ中心でAYREONよりもかなりすっきりした印象を受けた。一方、起伏に富んでいていろんな展開を持ちこんでいるあたりのバランス感覚の良さが嬉しい。最近のAYREONは広がりすぎてバランスが壊れてしまっていたもんね。
３曲目High Moonはオープニングのオルガンなんかまるっきりプログレ。じりじりと盛り上がっていくメロディもいい。映像を著しく喚起される。コーラスのリフも印象的。こういうのが本当にLucassenはうまい。
５曲目Master Of Darknessは弾けるような小気味いいリズム、そして高揚感のあるメロディが印象的。なんと言ってもDamian Wilsonがいい。本当にいいボーカリストだ。シャウト気味に歌えばRobert Plant風だし。彼がいることでその音世界を変えてしまうような存在感。花があるねえ。
僕の買ったLimited EditionはボーナスＣＤ付きで、HAWKWINDのメドレーやDavid Bowieのカバーが収められている。本編の出来の良さに自信を持っているのか、こちら２枚目も本編とほぼ変わらぬ方法論で演奏されている。これがまたぴったり合うのだ〜 また、本編収録済みの曲を、サラウンド効果で別バージョンに仕上げたものもあり、これがなかなか面白かったりする。まさにスペース・メタル。
AYREONの方向修正版なのかよくわからないが、今回のシェイプアップは大成功じゃないかな。次の作品もSTAR ONEタイプでお願いしたいところ。