ENCHANTのドラマーであり、バンド牽引役のひとりであるPaul Craddickのプロジェクト。参加メンバーにENCHANTのメンバーが集まっていて、ギタリストDouglas A Ottをはじめ、ボーカルのTed LeonardとキーボードのBenignusが参加しています。当時ベースが空席だったので要はENCHNAT全員が参加したという、言わばCraddickの意向で動く裏ENCHANTというわけ。
ENCHANTは、MARILLIONの技巧的な部分（特に変拍子）にRUSHの思索性を合わせた音でデビュー。奇数拍子で展開されるメロディックなBlueprint Of A Worldは本当に素晴らしかったです。その後、ギタリストDouglas A Ottが主導権を握りDREAM THEATERにヘヴィネスを足し合わせたよなWoundedを発表。この作品はファンの間で賛否両論（いやたいてい否定的だったかな・・）、一時休止したものの２０世紀末になってPaul Craddickを中心に復活。初期の音楽性にある程度回帰しながらも、音をシンプル＆オルタナにリニューアルして、翳りある旋律のギター・バンドとして２枚の作品を出しました。本作はその２枚のちょうど間に出たものになります。復習終わり。
さて、この作品はCraddickが主導権を握っていた頃のENCHANTの、言わば核となるような音です。残念ながらこのアルバムリリースして３年後の０２年にCraddickはENCHANTを脱退してしまうのですが、Woundedリリース直後の低迷期・・・つまりファンの失望とメンバー間の離反という行き詰まった時期に、彼がバンドに指し示したベクトルがこのサイドプロジェクトに顕れているかなと。
ミドルテンポの曲が多いです。そして誰もが驚いた正確且つ緻密なドラム。複数トラックに渡る厚みのあるギターは時にはロングトーンで、また爆音ギターで楽曲を盛り上げていきます。哀愁とウネリを感じさせる旋律、張りのあるボーカルも魅力ですね・・・・と、やっぱりこれは同時期のENCHANTそのものではないかいな。これではこのXENをENCHANTと区別せねばならなかった理由がますますわからない。
が、このプロジェクト、もともとCraddickひとりがバンドとは別に立ち上げたもの。実際、XENのWEBサイトはCraddickの手によってENCHANTとは別に運営されていた（現在は閉鎖されている）。
アルバム製作過程では技巧派ドラマーであった彼がドラムの技巧を高めるのではなく、新しい音を試行錯誤するために始めたプロジェクトだったのかもしれない。そして出来上がった作品は個性的で完成度も高い。本人達もこの出来には自信があったのだろう。結局、このプロジェクトで試したことの収穫がそのままENCNANTに引き継がれ、バンドの復活に繋がったのではないか・・・・と僕は推測してるんだけど。
どの曲もメロディラインが素晴らしい。この後に出たENNCHANT本体のJuggling 9 Or Dropping 10にかなり近く、今となってはこっちもENCHANT名義で出していてもほとんど不自然さを感じさせなかっただろうね。
「達磨」や「禅」といったいかにも東洋的なタイトルとは対照的に、アメリカのプログレバンドのひとつの手本のような作品です。どの曲も素晴らしい。最近のENCHANTの作品が好きな人には間違いなく愛聴盤になるはず。老婆心ながら付け加えておくと、本作は既にINSIDE OUTのカタログから消えている（つまり廃盤）。見つけたら即ゲットをですぜ（その後カタログに復帰）。
Craddickの脱退により、表裏一体の関係を解消し別々の道を歩むことになったENCHANTとXEN（というよりPaul Craddickだが）。どちらも今後の活動に期待したい。