CYAN

For King And Country

可もなく不可もなしのジェネシス型メロディック・シンフォ

　GENESISの影響下にあるメロディックなシンフォです。

　キーボード中心にプログレ色の薄いポップ志向。つまり典型的な８０年代ポンプの音ですね。おそらくGENESISのように「秀逸なメロディラインと凝った展開」の融合を目指しているようです。・・が、どうも同時期の他のバンドとの区別がつかないなあ。バンドとしての個性（決定打？）に欠けてます。また、シンフォニックな雰囲気も、キーボードに依存していて物足りないというのが正直な印象。ちなみに、このキーボード奏者が参加したFYREWORKSはメロディが秀逸で素晴らしい出来になっているんですけどね。

　１曲目はPeter Gabriel脱退前後のGENESISを手本にしたような長い曲。ここでGENESIS型シンフォを再現しようとしています。たしかにメロディラインはわかりやすいし、ピアノやシンセの煌くような美しいフレーズもあるな。でも、メリハリに欠け平坦な印象。盛り上がる終盤は悪くないけど、はっきり言って演奏時間はもっと短くてもいいような。
　それでもボーカルレスの曲やインスト部分には、ロングトーンを聴かせたこれまたエモーショナルなギターが登場。これはなかなかいい。どうもボーカルが出てくるとギターが引っ込むような展開になっているのが残念です。歌もそんなに上手くないし。もっとインストを聴かせて欲しいなあ。そう言う意味ではインストの充実してる３曲目、６曲目は悪くない。でも、鍵盤中心にメロディックなシンフォを、というコンセプトに、彼らの技巧がまだついていってないなという印象。「まだまだ」というのが率直な感想です。

　この後、彼らはメロディラインの美しさにこだわった作品作りに傾倒し、９９年に出たThe Creeping Vineは情感豊かなメロディが印象的な好盤です。

SILLY INSECTS SIMPly 28 ('??)

The Creeping Vine

ハートウォームなシンフォポップ　情感を大切にした楽曲が魅力

　THE FYREWORKSの中心的存在だったRob Reedのバンド。これが３枚目になります。
　エレガントなメロディック・シンフォ。シンフォ色は曲によって差があるが、概してさほど強くありません。あくまで曲を構成する要因のひとつって感じですな。曲そのものの構造はシンフォよりも他の音楽、トラッドやフォークなどの場合が多く、ミクスチュアーなモダン・シンフォと言えるかもしれません。YESやGENESISの影響が強く感じられます。
　インスト部分の展開力はなかなかのもので、RENAISSNACEを彷彿とさせるところも。シンフォにちょっとジャズロック的な展開を持ち込んだような感じ。メロティラインはハートウォームなタッチ。ポップで、むしろ非プログレ的ですらありますな。このあたりJon Andersonに通じるものがあるような。
　特筆すべきはRob Reedの朗々としたヴォーカル。前作ではちっともうまいとは思えなかったがオオバケしてます。中音域の力強い歌声は聴きやすく、この手のポップな作風にはぴったり。
　ギターはメロディック･シンフォによくいるタイプ。技巧も有るけど情感を大切にした演奏が嬉しい。しっとりとした音色を選び曲の世界を膨らませている。
　キーボードはYESのファンが好みそうなタイプ。ハードなソロから現在主流のメロディック・シンフォ特有の、琴線フレーズまでをカバー。派手ではないが好感の持てる演奏です。 　ベースはChris Squireのように動き回るタイプで、のんびりとしがちなこの手のメロディック・シンフォに、他のバンドとは異なる力強さや生き生きとした表情を与えています。

　２曲目Valhalaはエレガントで哀愁漂うメロディ。じっくりと聴いてその音楽世界に浸りたい、と思わせる曲。
　３曲目Gwenanはトラッド・フォーク調。前半は穏やかで暖かな展開で、覚えやすいメロディに民族色強い演奏が心に響く。また中間部は一転してバンド中心のハードなインストに。フルート、ギターによるシンフォニックな盛り上がり。アルバムの代表曲。
　４曲目I Will Show You Lifeは非プログレ的なファンキーな部分とジャズロック的な演奏が合体した、替わった作風。はじめは苦手だったが聴き込むとこれもなかなか。ベースの動き具合がいい。
　目の覚めるような冒頭の８曲目The Creeping VineはポップとYES系のシンフォをくっつけたような感じ。爽快感のある明るい曲調に、シンフォファンのツボを得たようなキーボードの演奏が楽しい。フルートも登場。ファイナルを飾るに相応しい曲。

　完成度は高く、丁寧に作られているなという印象。シンフォと他との融合を図りながら、ポップさを機軸として新たなモダン・シンフォを作っていこうとする意気込みを感じさせます。THE FYREWORKSに感動した人は次にこの作品を聴きましょー

F2 RECORDS F2 9902 ('99)