ARENA/IT BITESのJohn Mitchell（ギター）、IQのJohn Jowitt(ベース）とAndy Edwards（ドラム）が参加。これはいいですね。英国の９０年代シンフォをモダンにしてPORCUPINE TREEを加えた感じ。ドラマチックでメロディック、そして新しい。リズムやギターは明らかに今風です。ミドル・テンポですが、オルタナ／ポスト・ロック以降の英国プログレとしてはかなりイイ出来です。
１曲目Experiments In Mass Appealは小さな音でひっそりと始まります。しばらくそのまま粘着質に引っ張ってから、どーんと音が弾けます。構成が凝ってますね。
２曲目Welcome To Nowhereのキャッチーな旋律とメリハリが効いた展開がいいです。アルバム代表曲。
３曲目Pocket Sunは手数の多いドラムが新鮮。ぐりんぐりんと振り回されるみたいです。
４曲目Salineもいいですね。はかなげな旋律と切々と歌い上げるボーカルがいい感じ。
スピード感のある５曲目Dear Dead Daysは、ELOがオルタナ化したような感じ。つづく６曲目Falling DownもELO風の厚いシンセが特徴・・スリリングな曲です。
キャッチーでポップな８曲目Toys。ここまでくるとシンフォはもう跡形もなく消えてますが、曲自体はいいですよ。小気味いいリズムで聴きやすいです。
９曲目Wonderlandはこのアルバムの集大成。つまり、アルバム冒頭から曲が進むにつれどんどんプログレ色が消え、現在のシーンに近づいていくわけですね。１，２曲目で凝った構成にダーク、８曲目では残っていたシンフォ要素を完全消失させてキャッチーに仕上げています。これがひとつのゴールだとすると、この９曲目は１５分の大作。それまでの音にプログレ構成を加え、奥行き深い作風になっています。さらに、しなやかな曲調とメリハリのある構成。シンフォに戻っています。これが第２のゴール。そして彼らなりの英国シンフォ・シーンへの回答でしょう。
ここまでくると何曲かはもうプログレとは言えないものになってます。ですが、ARENAやIQといった９０年代シンフォが、今のシーンを意識して姿を変えたものと言えなくも無いですね。つまり、気品ある旋律、厚みのあるシンセ、凝った構成。シンフォのスピリッツを内包しつつ、外装は全面フルモデルチェンジって感じです。