BOSTONのギタリストであったBarry Goudreauの初ソロ。この作品のときはまだBOSTONの一員であり、同じくメンバーであるボーカリストBrad DelpとドラムSib Hashianも参加しています。また、後にBOSTONのボーカルとなるFran Cosmoも参加しています。前後のアルバム関係を整理するとこうなります。
７６年 BOSTON s/t
７８年 BOSTON Don't Look Back
８０年 Barry Goudreau s/t （本作）
８４年 ORION THE HUNTER s/t
このORION THE HUNTERの後に彼はBOSTONから解雇されてしまいます。詳しくは彼の公式サイトに詳しく書かれています。ご参考まで。
音のほうですが、シンプルな７０年代アメリカン・ロックとBOSTONの中間にあります。想像できないよという方のために詳しく述べますと、基本はシンプルなアメリカン・ロックンロール。そこにBOSTONのギターが入っているという感じです。気持ちいいくらい厚みのあるあのギターの音です。ギターもボーカルも音を重ねていて、たしかにBOSTONに聞こえる瞬間もあります。ただし、BOSTON特有のスペーシーな部分は一切ありません。こちらの作品は直接的ですね。こちらに慣れると、BOSTONのサウンドがもったいぶった感じに聞こえてしまいます。
初期のBOSTONにあったスピーディなロックンロールや、いかにもアメリカンな楽曲は彼が持ち込んだものかもしれませんね。
１曲目 Hard Luck
初期BOSTONの持ってたロックンロール要素を抽出したような曲です。スペーシーな要素は排除していますが、BOSTONのルーツを考察する上で面白い曲です。ギターソロはなかなかかっこいいですよ。Delpもワイルドな歌唱を聴かせてくれます。
２曲目 Nothin' to Lose
シンプル。もう典型的なアメリカン・ロックです。彼はロックンロールなギタリストなんですね。後の名ボーカリストFran Cosmoにとってお披露目の曲でもあります。高い声も出ていてかなりの力量であることが伺えます。
３曲目 What's a Fella to Do
Delpがボーカル。厚みのある音はBOSTONのアルバムに収めれていそうな気もします。なによりもRTZに通じる音です。ギターソロを聞いていると、初期のBOSTONで確かに収められてる手癖です。BOSTONが３枚目以降にトータルな音つくりを目指す一方でギターソロがおとなしくなってしまったのは、Goudreauの脱退が一因であることは間違いなさそうです。
４曲目 Mean Woman Blues
痛快なブルーズ。これぞアメリカンですね。スピード感のあるロックンロール。ここまでやればBOSTONと正反対のベクトル。ボーカルはBlad Delpですが素晴らしいシャウトです。BOSTONでは聞けませんね、これは。
５曲目 eavin' Tonight
シンプルなロック。さすがにちょっと単調かなあ・・ これでフツーのロックにギターの音色だけBOSTONしてるだけと言えなくも・・まあいいや。Cosmoがボーカルです。
６曲目 Dreams
前曲が単調だっただけに、冒頭がかっこよく聞こえます。目の覚めるようなDelpの歌声が素晴らしいです。ただ、その後がやはり単調・・
７曲目 Life Is What We Make It
おっ これはいいぞ。スピーディ＆ワイルドなロックです。音が走ってますよ。ボーカルははBlad Delpです。
８曲目 Sailin' Away
Delpが歌うバラードです。アコースティック・ギターと管弦楽の優しい音色が心地よいです。
９曲目 Cold, Cold World
テンションの高いメロディック・ハード。SHOOTING STAR風です。Cosmoの輝くような高音ボーカルもなかなかです。ギターソロもかっこいい。
BOSTONそのものを期待するとつまんないかもしれません。しかし、SHOOTING STARタイプのアメリカン・ハードが堪能できます。しかもギターをBOSTONの音色で聞けるという、なかなかの好盤ですよ。物事は良い方向に考えましょう。
アメリカンロックを推し進めたのがORION THE HUNTERであり、そしてBOSTONファンには物足りなかったであろうスペイシーな要素まで加えたゴージャスな作品がRTZです。
あのような形でBlad Delpが世を去ってしまったわけですが、いずれBOSTON再評価ブームが来ることでしょう。そして、そこではDelpも再評価されるわけで。その際には、彼の歌唱が聞けるこのアルバムも注目されることでしょう。