Daniele Liverani

View Point

スティーブ・ヴァイ、エリック・ジョンソン系の超絶ギタリスト　イタリアから登場

　EMPTY TREMORのメンバーのソロ。テクニカルなメタル・ギター・サウンド。キーボードも兼任し、手数の多いリズム隊を従えている。全曲インスト。
　EMPTY TREMORのシンフォニックな音からは想像できないくらい、カラッ とした歯切れの良い音。特に、イタリアのメタルは湿っぽいという先入観で聴くとびっ くりします。スリリングな展開を得意とするフュージョン・バンドにメタルな速弾きギ タリストが加入したような感じ。もちろんフュージョン的演奏もやっている。最初に聴 いた時、Steve Vaiを思い出した。
　メロディも比較的シンプルで、印象的なメロディ・ライン。メロディがみんな明るく て、はね回るように陽気。ちゃんとギターの音が立っている。自ら兼務するハ モンドオルガンやピアノ、速弾きシンセソロも決まっている。Steve VaiやNiel Zaza、 Eric Johnsonのファンにはオススメ。メタリックなEric Johnsonという感じかな？
　ほとんど全曲気に入ってるけど、中でも８曲目Fatal Swan、１１曲目Nearly Gold Emotionなんか凄くいい。楽しいし、飽きないわー　SEを駆使してアヴァンな構成の４ 曲目WA.I.F.Y.やピアノ・ソロのみというクラシカルな６曲目The Favorite Bookなど変 わった曲も収録されています。怒濤の３６分間。
　スピード感、スリリングさ、重量感はかなりのもの。プログレ作品ではないけど、こ こまでテクニカルかつエンターテイメントな作品であればプログレファンにも十分ア ピールする内容です。

99TH FLOOR / VIRTUOSO RECORDS VR-03('99)

Daily Trauma

スピーディ、テクニカル、メロディアス　みんなが待ってた痛快インスト・ハード！

　Liverani入魂の２作目。ギター・オリエンテッドなハードロック・インスト。これが前作以上にいい。
　一言で言うなら「痛快」。スピーディでテクニカルそしてメロディアス。そしてプログレッシブな音もふんだんにちりばめ、胸のすく演奏です。こういうのを待ってましたよ！
　マルチミュージシャンであるので、ドラム以外はすべて自分で演奏している。ギターのテクはもちろんのこと、要所要所で披瀝されるキーボードの素晴らしいこと。プログレ心がわかる演奏がうれしい。サポートのドラマー氏もスピーディで胸のすくようなリズムをたたき出してくれている。
　いろんな曲が収められてますが、基本的なスピード感でぐいぐい押しつつ、多彩な表現力で聴き手を翻弄するようなタイプがほとんどです。スローな曲としては伸びやかなアコースティック系や、ウネリのあるエスニック系がありますが、よくあるバラードはありません。
　それと、実に旋律がいい。もともとメロディを大切にする人でしたが、前作から飛躍的に旋律は良くなってます。フックとしても機能しているし、しかしありがちではない。そして印象的なフレーズを曲中にいくつも配置して、楽曲に深みを作り出してます。メロディでも一級品かと思います。
　ギタリストがインスト作を作るとフュージョンやジャズ色が出てくる場合が多いですが、彼の場合、すぐれたインストですがフュージョン色は薄いです。あくまで技巧派インスト・ハードロック。そしてそこへプログレを流し込んだような感じです。本作に関する限り彼にはジャズの素養こそ感じられませんが、メタル、そしてメタル以上にクラシックの影響を色濃く感じました。
　タイプ的にはSteve Vaiをストレートにした感じ。曲によってはNiel Zaza、Eric Johnson、Jeff Beckに近いです。

　なかでもプログレ度の高い１曲目Kingdom Gateと３曲目Twin Spiritsは素晴らしいです。畳み掛けるような変拍子展開、印象的なフレーズ、抑揚を利かせた劇的な構成。メタル・フュージョンの王道的な音。こういうのが聴きたかったです。
　７曲目Perpetual Gratitudeはゆっくりとした曲ですが、途中から和テイストのメロディに変わってびっくり。JADE WARRIORみたい。
　また、９曲目Odd ValleyはJeff Beckが変拍子やってるみたいな曲。一方、１４曲目Race AgainstはSteve Vaiがプログレやってると想像してください。
　１６曲目I Will TryはDEXIE DREGSのような大らかな曲です。
　ラストの１８曲目Daily Traumaは最もテンションの高い曲。これもメタル・フュージョンのお手本的な作品です。冒頭からクラシカルなピアノが入ってまして、これが緊張感を盛り上げる盛り上げる。いやー　構成、ギターだけでなくピアノのテクニックまで文句なしです。すごいの一言です。

　メタル・フュージョンのファンだけでなく、プログレ・ファン、メタル・ファンに広く聴いてもらいたいような作品です。彼の名声はこれでずっと上がるでしょうね。イタリアにLiveraniあり、です。

Frontiers Records FR CD 190 ('04)