０２年に突如登場し、大きな話題になったのがこのプロジェクトMECCA、そして中心人物であるJoe Vanaでありました。元TOTO、元TRILLIONにして現在ソロで活躍中のシンガーFergie Frederiksen、さらにはやはりTOTOの初代ベーシストであったDavid Hungateが参加。他にもマニア心をくすぐるようなゲストが多数参加していて・・後で詳しく述べるんですが、それにしてもこのJoe Vanaの力量に驚きました。
まずこの人、大変優れたシンガーです。ヴォーカル・パートを分け合うFerigie Frederiksenに決して引けを取らないくらい。もちろん輝くような高音ヴォーカルを披露してくれたFrederiksenは素晴らしい働きぶりなのですが、中音から高音までをしっとりした声で情感たっぷりに歌い上げるVanaも味わい深いがあります。
次のこの人は優れたコンポーザーです。本作に収められた楽曲の多くを彼が手がけていて、曲の良さはメロディック・ロックのファンなら皆わかってくれると思います。メロディック・ハードというジャンルは、かつての黄金時代を再生産をしているようなところが宿命的にあるわけで、ある程度似てないとファンは振り向いてくれないし、かと言ってあまりに新鮮味がないとこれもダメ。このアルバムでは、SURVIVORやTOTO、STARSHIPなどなどのメロディック黄金時代を踏襲しつつ、しっとり感をさりげなく漂わせ、親しみやすくも洗練したサウンドに引き上げているのですよ。
さらにこの人、戦略に長けたプロデューサでもあります。元TOTOのメンバー達、TRILLIONの初代ヴォーカリスト、さらにはJim Peterikといったマニアックな人選！ また、先に好評を博したTWO FIRES（たしかに音は似ている）にも似たアートワークを登用するなど（ってこれは考えすぎか？） Joe Vanaの戦略と人脈は素晴らしいですね。なんでも次作ではJoe WalshとDavid Kimballを呼び込むと言ってますが。
さて、そうなると俄然期待される音の方ですが。例えるならばSURVIVORやTOTO、JOURNEY、さらにはTHE STORMやTWO FIRESを連想させるメロディック・ハード。泥臭さは無縁。かわりにＡＯＲ要素を加え都会派に仕上げています。しっとりした音つくりもいい感じ。とりわけ、はじめて聞く名前ですがギタリストMike Aquinoの情感豊かなギターは、聴き手を翻弄するかのように曲の表情を丹念に作り上げていく。そこへ二人のボーカルを上手く使い分けながら、ドラマチックに構成されています。そして上質のＡＯＲのように洗練された雰囲気が音の隙間を埋め、しっとりとした音像を作り上げているのが特徴です。
１曲目 Velocitized
骨太なタテノリビートが痛快なハードロック。ワイルドなギターと印象的なフレーズを散りばめたメロディライン。THE STORMやTWO FIRESが好きな人には強くアピールする曲です。Joe Vanaの雄雄しい歌声は素晴らしい。この１曲を耳にすれば、彼が有名ヴォーカリストに肩を並べる逸材だと誰も確信するのではないでしょうか。
３曲目 Can't Stop Love
突き抜けるようなFrederiksenとVanaの共演が素晴らしいです。アルバム中のハイライト。メロディも印象的だし、中間のＢメロ、ドラマチックな演出など構成も文句なし。この心地良さは一級のＡＯＲ作品と言えます。
４曲目 Silence Of The Heart
Vanaのしっとりした歌声と洗練されたメロディの高品位ＡＯＲ。マイナーからメジャーに転調するメロディラインなんか実にニクい。泣きの入ったギターもいいぞ。個人的はめっちゃ気に入っています。
６曲目 Mecca
洗練されたＡＯＲ。Aquinoのギターがいいですね。曲タイトルにMeccaというプロジェクト名をつけたところに、洗練されたメロディック・ロックというスタイルこそ彼らの本質と言いたいのかも。
７曲目 Wishing Well
テンションの高いFrederiksenの歌声と緊張感のある旋律は、彼が在籍していた頃のTOTOを彷彿とさせます。
１０曲目 Falling Down
STARSHIP風かな。メロディラインが巧み。AIRPLAYやCHICAGOのような上質ＡＯＲに仕上げているのが見事。エモーショナルなフレーズを聴いているとため息が出ます。
１１曲目 Mischievous
ゴージャスなブラスが入ったノリの良い曲。ブルージィでちょっと弾けた感じのギターとシャウトするヴォーカルもまたかっこいい。
どの曲もいいです。Joe Vanaのヴォーカルも凄い。そしてFrederiksenはじめ強力なゲスト陣も素晴らしい仕事をこなしています。そしてこの洗練された音つくり・・・ＡＯＲ要素を盛り込み、なんとも耳触り良い音です。
職人たちが結集したこの作品、そのタイトルどおりメロディック・ロックの巡礼地のようです。願わくば、多くのメロディック・ファンが、輝かしい時代を継承するこの作品に集わんことを。そしてメロディック・ロックのすばらしさを思い出してもらえればと願ってやみません。