WORLD TRADE、YESと渡り歩き、Chris SquireとのプロジェクトであるCONSPIRACY、現在はCirca:やプロデュース業でYES周辺人脈と活発に交流しているBilly Sherwood。そのプロデビュー作がこれです。西海岸出身らしくＡＯＲの雰囲気と、少し屈折した旋律が同居する不思議な曲想が多いです。メンバーは次のとおり。
◆Michael Sherwood：ボーカルとキーボード
現在はＣＭの仕事をしているようです。YESのUnion（なんとABWH側）に参加しコーラスを担当。
◆Billy Sherwood：ボーカルとベース
WORLD TRADE、THE KEY、YES、ソロ、CONSPIRACY、YOSO、Circa:そして数々のプロデュース。最近ではJohn Wettonを手がけました。
◆Jimmy Haun：ギターとボーカル
YOSO、Circa:でBillyと帯同することが多い彼ですが、Steve Howeの真似がうまい・・ABWHのギターの大部分は彼が弾いていたということが最近暴露されましたね。
◆Guy Allison：キーボード
WORLD TRADE、UNRULY CHILD、The Doobie Brother、Air Supply
◆Gary Starnes:ドラムス
プロデュースにはDavid PaichとSteve Porcaroの名が。そう、彼らはTOTO周辺人脈のバンドだったのだぁ。
シンプルながらも、ＡＯＲ系では異色な、硬質な音作りと湿っぽい旋律。その音のルーツにあるのはどうやら90125YESとTOTOのようです。Trevor Rabinの加入とTrevor Hornのプロデュースで復活したプログレ・バンドYESでしたが、ポップ作品としても個性的な音でした。複数のボーカル、サンプリング、デジタルシンセのカラフルな音色、Alan Whiteの独創的なドラム、Rabinのギター・・このパワフルなポップ作品は多くのフォロワーを生みます。THE LIGHT、CAIRO、WHITE、ESQUIRE、TREASON・・そしてこのLODGICもそのひとつです。
とは言え、かなり軽めの音です。スカスカした感じ。ニューウェイブが少し残っているような音なんですね。90125をかなりシンプルにしたような、あるいはエレポップ風TOTO。
１曲目 Romance
いきなりニューウェイブ／エレポップ調ではじまります。リズムはPOLICEかOUTFIELDかという感じ。Owner Of A Lonely Heartを想起しますが、シンセの音が目立ってかなりシンプル。曲想は甘くムーディなのですが、BillyのベースだけがChris Squireしてる！ ボーカルはStingっぽい。
２曲目 Step Back
Mr.Mister風。音をかなり触っていたりＳＥを使うなどのギミックがたくさん入っています。
３曲目 Lonely Man
聴けばすぐわかるPOLICE風。シンセ多用で透明感の強い音です。
５曲目 Rise & Fall
POLICE ／ Sting風。
６曲目 Push So Hard
これはPOLICEのSynchronicity収録の曲をつなぎ合わせたような感じだな。Michael Sherwoodの声だと思うがStingに似てる。
７曲目 In The Cards
コーラスをうまく使っています。キーボードと複雑なリズムの絡みは非凡なところを感じさせます。
８曲目 Nomadic Sands
TOTOをシンプルにして、Chris Squireが参加してるような感じ。
９曲目 Linda Sue
これはもうTOTOですね。初期にそっくりな曲があったはず。ギターがLukathur風で笑った。
１０曲目 Bringing Me Back
テンションの高いメロディック・ハード。時代を感じ出せる音です。
レビューによっては待ち続けていた佳作であるとか、秀作などと高い評価が散見されるのですが、私個人としては正直それほどまでとは思えません。上述のとおり元ネタがすぐにわかるくらいオリジナリティに欠けるということと、これはBilly Sherwoodの特質なんですが湿っぽい旋律がＡＯＲの枠組みに入っていることに違和感を覚えるからです。
最近はYESとTOTOを合体させたYOSOってのをSherwoodがやりましたね。無茶なことやるなとびっくりしましたが、なるほどこの頃からそういう志向だったのかもしれません。