THE STORM

The Storm

琴線バラードからワイルドなロックンロールまで　ジャーニーそっくり・・

　元909のKevin Chalfantと元JOURNEYのGreg Rolieを中心に結成。ギターはChalfantとTWO FIREでも行動をともにしているJosh Ramos、リズム隊はこれまた元JOURNEYのベースRoss ValoryとドラムスSteve Smithという布陣。ChalfantはSteve Perryに似た声の持ち主として有名ですが、本作でも強くJOURNEYを思わせる歌声。さらに元JOURNEYの３人、そしてNeil SchoneタイプのRamosのギター・・・当然ながらJOURNEYそっくりです。JOURNEYをもっとワイルドにしたような感じ。

　１曲目You Keep Me WaitingはSteve Perryをワイルドにしたような歌唱が聴きモノ。従来のメロディック・ロックを踏襲しながらもドラマチックな曲調、印象的なギターソロ・・・この１曲だけでも十分に聴き応えがあります。２曲目I've Got A Lot To Learn About Loveは全米で大ヒットしたシングル。抑え目に始まり徐々に盛り上がる緊張感と、しなやかさなメロディラインが魅力です。
　３曲目In The Rawは、すっかり洗練されたJOURNEYがかつて持っていた泥臭さに満ちています。これはRolieの資質ですね。４曲目You're Gonna Miss Meは起承転結のしっかりしたドラマチックな曲。メロディック・ロックのお手本のような作品です。
　６曲目Show Me The Wayは文句なしに名曲。感動的なメロディライン、伸びやかなヴォーカル、ロングトーンで琴線をくすぐるギター・・メロディック・ロックのファンがモロ手を挙げて大歓迎のバラード。シングルにもなりました。厚みのあるコーラスとChalfantとの掛け合いで進む７曲目I Want You BackはSTARSHIPを髣髴とさせます。
　Greg Rolieの渋い歌声をフィーチャリングした８曲目Still Loving You。対照的にシャウト気味のChalfantの歌声が刺激的な９曲目Touch And Go。１１曲目Take Me Awayはフックになるフレーズがいくつもあるソフトな曲。１２曲目Can't Live Withot LoveはこれぞTHE STROMと言うべき、情感豊かなメロディと抑揚の効いた構成です。彼らの代表曲ですね。ラストを締めくくるに相応しい。ドラマティック。

　艶っぽいSteve Perryに比べChalfantには芯がある。このアルバムでは琴線バラードからワイルドなロックンロールまでしっかりと聴かせてくれるます。８０年代メロディック・ロックが好きな人には、再結成JOURNEYよりも本作のほうが面白いんじゃないかな。

EAST WEST 7 91741-2 ('91)

Eye Of The Storm

ジャーニーのファンは必聴　珠玉のメロディに感動

　元JOURNEYのGreg Rolie,元707のKevin Chalfantらを中心に結成されました。
　JOURNEY時代にも多くの曲を提供していたRolieとSteve Perry似の声を持つChalfant。誰もがJOURNEYを連想することでしょう。メロディ、アレンジともにJOURNEYの全盛期に匹敵する出来です。
　メロディはすぐに覚えられます。８０年前後のメロディック・ハードの典型のようですが、いろんな曲があって飽きません。親しみやすく優しく琴線に触れる・・・曲作りが本当に上手いですね。プロダクションも良いです。王道メロディであるが故に演奏はよく考えられています。さすがベテラン。一音一音を大切にしているなという印象です。
　Chalfantの声はSteve Perryをもっとハスキーにしたような感じ。時に自己陶酔じゃないのと思えるPerryよりも、若々しく好感が持てます。

１曲目 Don't Give Up
　シンプルで優しいメロディ、スケールの大きさ、ツボを得たソロ・・・まさに全盛期のアメリカン・ロックを彷彿とさせます。
２曲目 Waithing For The World
　Greg RolieがJOURNEY在籍時に書きそうなバラード。
３曲目 I Want To Be The One
　サビにこのタイトルが出てくるんですが、そこはまさに古き良きアメリカン・ロックだなと。８０年前後、この手のメロディックなバンドが元気だった頃を思い出します。
４曲目 To Have And To Hold
　かつてのJOURNEYがやりそうな王道バラード。Chalfantの声はこういう曲にピッタリ。王道だけにありがちなメロディですが、そこはベテランらしく上手く聞かせますね。何度聴いても飽きないんです。技ってこういうことなのかもね。
５曲目 Livin' It Up
　ファンキーなメロディにツイン・ヴォーカルが乗る。もうひとりのヴォーカリストはJOURNEYでも達者な歌声を聴かせてくれたGreg Rolieでしょうか。曲にぴったりあったソウルフルなヴォーカル・ワークと、うねりのあるギターソロが聴きものです。
６曲目 Love Isn't Easy
　メロディック・ハードの王道。JOURNEYがシングルで出しそうな曲。一度聴いたらメロディが頭から離れません。
７曲目 Fight For The Right
　これもRolie在籍時のJOURNEYかと錯覚するような曲です。
８曲目 Give Me Tonight
　やや物悲しいメロディ。サビの部分の切ないメロディが印象的。
９曲目 Soul Of A Man
　ツインヴォーカルが聴きもの。典型的な８０年代メロディです。Huey Luwis and The News か Brian Adamsかと。JOURNEYでは絶対にやりそうにないソウルフルな曲です。
１０曲目 What Ya Doing Tonight
　再びJOURNEY風バラード。Rolieの奏でる切なく美しいピアノに、Chalfantのハスキーな声が乗っています。絶品。
１１曲目 Come In Out Of The Rain
　メロディックなギターが牽引するＡＯＲ。流れるようなメロディがさわやか。
１２曲目 Long Time Coming
　１１曲目同様、ギター中心の優しくさわやかな曲。繰り返しの多い展開は、絶えることなくいつまでも曲が続くような錯覚を覚えます。この曲のようにバンドが留まること無く活動してくれることを望みたいですね。

　JOURNEYのDon't Stop Believin'のような奇跡的なメロディこそありませんが、アルバムのクオリティはかなりのもの。時代が時代ならどの曲をシングルに切ってもそれなりにヒットしたかも。８０年代メロディック・ハードの良さが詰まった傑作です。JOURNEYタイプが好きな人は是非聴いてください。損はしません。
　また、このバンドの前進となるTHE V.U.もリリースされています。こちらも是非。

MUSIC FOR NATIONS CDMFN 196('95)